中国、初の国産体外式膜型人工肺(ECMO)装置を緊急承認

(中国)

中国北アジア課

2023年01月11日

中国国家薬品監督管理局は1月5日、新型コロナウイルスに感染した重症患者の治療ニーズを確保するため、初の国産体外式膜型人工肺(ECMO)(注)装置として、1月4日に深セン漢諾医療科技の体外式心肺補助装置と使い捨ての膜型人工肺キット(以下、両製品)の登録申請を緊急承認したと発表した。

今回承認された両製品は、深セン漢諾医療科技が、深セン市に建設された国家高性能医療機器イノベーションセンターおよび中国科学院深セン先進技術研究院、中国最大の医療機器製造販売会社である深セン邁瑞生物医療電子(マインドレイ)と共同で研究開発を進めてきたもの(「深セン新聞網」1月6日)。独自の知的財産権を持ち、性能は基本的に海外の類似製品の水準に達しているという。急性呼吸不全または急性心肺不全やその他の治療法ではコントロールが困難で、病状悪化もしくは死亡のリスクがある成人患者を対象としている。

中国政府は、2022年12月28日発表の「新型コロナウイルスによる感染に対して『乙類として分類し、乙類として管理する』を実施する全体計画案の通知」の中で、ECMOを含む重症患者治療用設備への投資拡大を規定するなど(2022年12月28日記事参照)、ハイエンド医療機器の開発に注力する方針を明確に示していた。

なお、深セン漢諾医療科技らが所在する深セン市は、世界有数のイノベーション都市として注目されてきたが、中国のハイエンド医療機器産業を牽引するクラスターを形成する都市としても存在感を高めている。工業情報化部は2022年11月30日に全国45カ所の国家先進製造業クラスターを公表。バイオ医療・ハイエンド医療機器分野で選ばれた5カ所のクラスターの中に、深セン市・広州市のハイエンド医療機器産業クラスターも含まれた。

(注)ECMOは、肺炎や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの重症呼吸不全、急性心筋梗塞、急性心筋炎などの循環不全により、瀕死の状態にある患者に対して、呼吸や循環をサポートする目的で使用される体外循環装置。

(富永笑美子)

(中国)

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