米企業の半数が人手不足を感じていないと回答、米民間調査
(米国)
ニューヨーク発
2023年01月25日
全米企業エコノミスト協会(NABE)が1月23日に公表した2023年1月ビジネス景況調査によると、回答企業の半数が人手不足を感じていないと回答した。急激な金融引き締めにもかかわらず、足元では堅調さを維持する労働市場だが(2023年1月10日記事参照)、一部で軟化傾向も見られ始めてきた。
NABEの調査は1月4日から11日にかけてNABE会員企業を対象に実施され、60人のパネリストが回答した。調査では、人手は不足していないとする回答者が半数(50%)と、前回2022年10月の調査時(45%)より5ポイント増加した。ただし、熟練労働者については、前回調査時(45%)よりは減少したものの、依然として40%の回答者が不足していると回答している。
また、回答者の19%は従業員数が今後3カ月で減ると回答し、NABEは「2020年以降で初めて、従業員数が今後3カ月で減るとの回答が、増加するとの回答を上回った」としており、金利上昇などの影響により、人員を削減する企業が今後増える可能性がある。
実際に業界によっては、人員削減はすでに顕著となっている。テック企業の動向を調査しているレイオフス・ドット・ファイ(Layoffs.fyi)によると、1月24日現在でテック企業185社において約5万7,600人が人員削減の対象となっているほか、金融業界では大手金融機関のゴールドマン・サックスがリーマン・ショック時と同規模の3,200人の人員削減に乗り出しているとされており(ブルームバーグ1月8日)、こうした動きは他の銀行にも波及する可能性もあるとされている。これらの業界は金利上昇の影響を色濃く受ける業界だが、金利上昇の影響がより幅広く広がっていけば、雇用逼迫が目立つ娯楽・接客業などでも(2023年1月10日付地域・分析レポート参照)、逼迫感が緩和していく可能性もある。
なお、今回調査では雇用軟化の傾向が見られたが、米国経済は既に景気後退(リセッション)入りしている、もしくは2023年にリセッション入りすると回答した割合が全体の55%で、前回10月調査の64%から減少していることに加え、3カ月後の価格動向見通しに関する「ネットライジング指数(NRI)は前回調査時から10ポイント低下の25と、2020年10月調査以来の低水準となっており、先行きの景況感とインフレ動向にはマインド改善の兆しも見られる結果となっている。
(宮野慶太)
(米国)
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