米連邦取引委員会、競合企業への転職を認める規則案を提案

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月12日

米国連邦取引委員会(FTC)は15日、営業秘密の保持などを目的に、労働者が競合企業に転職することを禁ずる「競業避止義務」について、これを禁止する規則案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

「競業避止義務」は雇用主と労働者の間の契約条件の1つで、雇用契約終了後の特定の地域や期間に、労働者が競合する別の雇用主の下で働くこと、または競合する事業を自ら開始することを禁止する行為を指す。今回の規則案は、有給・無給を問わず、独立請負業者および雇用主の下で働く全ての労働者が対象で、雇用主が労働者との間でこうした競業避止条項を締結することを禁止するとともに、既存の競業避止条項についても撤回し労働者に通知する必要があるとしている。

FTCによると、米国の労働者の約5人に1人に当たる約3,000万人が競業避止条項により転職を妨げられており、今回の規則案によってスムーズな転職が実現されることで、年間約3,000億ドルの賃金が増加するとしている。同規則案は2023310日までパブリックコメント外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが受け付けられるとともに、最終規則が公表されてから180日間の準備期間が設けられるとしている。FTCのリナ・カーン委員長は声明で、「競業避止義務は労働者の自由な転職を妨げ、賃金上昇や労働条件改善の機会を奪い、企業が発展していくために必要な人材のプールを奪っている。今回の規則案は、このような慣行をなくすことでより大きなダイナミズムとイノベーション、そして健全な競争を促進することになるだろう」と述べた。

今回の規則案発表は賛成3、反対1の委員による投票結果で決まったが、反対したクリスティン・ウィルソン委員は「競業避止義務の期間と範囲が不合理かどうか、ビジネス上の正当性を考慮して、事実に即して調査することがこれまでの判例」「今回の規則案を支持し得るだけの明確な証拠は現時点ではない」として、カーン委員長と異なる見解を述べている。米国商工会議所は、FTCは企業の競争問題に関する規則を発行する法的権限を有していないとして、今回の規則案について法的措置を検討していると述べており(ロイター15日)、最終規則の取りまとめまでには紆余(うよ)曲折も予想される。

(宮野慶太)

(米国)

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