米国の2022年のVC投資は前年比37%減も、フロリダなど一部州では増加傾向

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月31日

米国調査会社のCBインサイツが1月11日に公表した、世界におけるスタートアップへの投資状況に関する調査レポート「ステート・オブ・ベンチャー(State of Venture 2022)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、米国における2022年のベンチャーキャピタル(VC)投資総額は前年比37.1%減の1,984億ドルで、投資件数は1万2,141件だった。投資額、投資件数ともに過去最高を記録した2021年(3,153億ドル、1万3,024件)から減少したものの、米国でのスタートアップへの投資額は世界全体の半数近く(48%)と、依然として大きな存在感を持つ。

レポートによると、スタートアップへの投資が活発だった2021年から一転し、2022年第1四半期以降は、投資金額が4四半期連続で減少した。投資ステージ別の割合をみると、アーリー・ステージへの投資は前年から変わらずの全体の57%を占めたが、ミドル・ステージ、レイト・ステージは、投資全体に占める割合がそれぞれ12%(2021年:16%)、8%(2021年:11%)とわずかに減少した。

また、2022年はM&Aや特別買収目的会社(SPAC)との合併などのスタートアップの投資回収(エグジット)の減少が目立ち、中でも新規株式公開(IPO)が最も下落幅の大きい前年比72%の落ち込みとなった。

スタートアップのデータベースを運営するクランチベースの発表(2023年1月27日)によると、地域別では、全米有数のスタートアップ・エコシステムを有するカリフォルニア、ニューヨーク、マサチューセッツの3州で、投資額が前年から40%以上減少した。これら3州のうち、ニューヨーク州が最大の落ち込み幅をみせており、49%減の265億ドルとなった。同州の主要セクターであるフィンテック企業が資金調達に苦戦し、州全体での大幅減少の要因とみられている。次いで、マサチューセッツ州は46%減の195億ドル、カリフォルニア州は42%減の919億ドルとなった。

一方、クランチベースによる別の発表(2023年1月26日)によると、一部の州では大幅な増加がみられた。特にフロリダ州では、2022年のVC投資額は前年比25%増の97億ドルと、全州で最大の増加幅を記録し、2020年(34億ドル)と比較すると、約2.9倍の伸びとなった。同社によると、同州には州所得税がないことや、新興企業の成功例が増えていることがスタートアップの拠点としての成長を後押しし、さらに新型コロナウイルスの感染拡大期間における他州からの移住によって最も恩恵を受けたとしている。そのほか、ノースカロライナ州では投資額が22.5%の49億ドルとなり、ゲーム開発を手掛けるエピック・ゲームズが20億ドルと大型資金調達を行ったことが大きく寄与した。

ベンチャー投資会社レボリューション(Revolution)のスティーブ・ケース最高経営責任者(CEO)は「VC投資の地理的分散の多様化は(以前から)着実に進んでいるが、新型コロナウイルスのパンデミックと人材の移動が、その傾向を加速させた可能性が高い」としている。加えて、半導体やインフラなどのセクターに関する政府による新たなイニシアチブや、スタートアップの進出先で特定の分野で優位に立つ地域も、競争条件の公平化(レベル・プレイング・フィールド)に役立っていると指摘した。

(樫葉さくら)

(米国)

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