スウェーデン、原子力発電所建設に向けた法改正を提案、家庭向け電力補助金も発表

(スウェーデン)

ロンドン発

2023年01月18日

スウェーデン政府は1月11日、原子力に関する改正法案を提案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。政府は、既に原子力発電所がある場所以外での原子炉の建設を禁止するという環境法の規定のほか、運転中の原子炉の数を10基までに制限する規定も削除することを提案した。現在、同国にはフォルスマルク、オスカルスハムン、リンハルスの3カ所に6基の原子炉がある。本提案は今後3カ月間、意見公募を行い、2024年3月に法案を施行する予定。

ウルフ・クリステション首相は会見で、産業および運輸の電化や脱化石燃料への移行が進む中、国全体でさらなるクリーンな電力が必要で、あらゆる種類の非化石エネルギーが必要だと述べた。さらに、より多くの場所に、より多くの原子力発電所を建設することを可能にしたいという意向も示した。同首相は2022年10月の新政権発足時、歴代政権が解体に着手してきた原子力について、拡大を示唆。原子力発電の開発、拡大を推進し、新設に当たり信用保証を提供するほか、認可手続きの迅速化などに向けた法改正を行うと述べていた(2022年10月19日記事参照)。

新たな家庭向け電力補助金を発表

スウェーデン政府は1月10日、新たな家庭向け電力補助金の計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

政府はすでに、2021年10月から2022年9月までの間、電力価格が低いスウェーデン北部を除く南部と中部の家庭に、電気料金に基づく電力補助金を支払っていた。しかし2022年11月から12月にかけて、国内全体の電気料金が高止まりしたほか、住宅暖房により家庭の電気使用量が増えた。さらに、この時期の南部と北部の電力価格の差は比較的小さいため、政府は全国の家庭を支援する必要があるとした。今回の新たな支援は、2022年9月に決定した支援策と同等の水準とし、2022年11月から12月にかけて、平均電力価格が基準価格の1キロワット時(kWh)当たり75スウェーデン・オーレ(約9円、1スウェーデン・クローナ=100スウェーデン・オーレ、1スウェーデン・クローナ=約12円)より高かった消費分をスウェーデン全土の家庭を対象に支給する。なお、財源はボトルネック収入(注)から確保する予定。

(注)送電網の送電容量の不足により、国内の電力に価格差が生じた場合に電力事業者に発生する収入。

(島村英莉、篠崎美佐)

(スウェーデン)

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