タイ政府、ワクチン接種証明の義務付けを撤回

(タイ)

バンコク発

2023年01月12日

タイ政府は、インバウンドの旅行者に対して、今後も新型コロナワクチン接種証明書の提出を義務付けることはなく、全ての外国人旅行者を歓迎することを再確認した。

アヌティン・チャーンウィーラクーン副首相兼保健相は1月9日、スワンナプーム空港で開催された中国人旅行者の第1陣を歓迎する式典のスピーチ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて、「旅行者へのワクチン接種証明の提示の義務付けについて、一度公表されたが、その後保健省の委員会で撤回することを決定した」と発言した。ただ、旅行者はタイに滞在する間、公共の場でのマスクの着用、手洗い、その他予防措置の実施が推奨される。

関連して、タイ民間航空局(CAAT)が1月10日に公表した航空会社に対する最新の通知においても、ワクチン接種は不要となっている。中国やインドなど、PCR検査による陰性証明が必要となる国からの入国者(注)に限り、最低1万ドルの医療保険(新型コロナウイルス感染症治療費を含む)に加入しなければならない。その際、保険期間はタイでの滞在期間プラス7日間とする必要がある。ただし、保険に加入していない場合でも搭乗を拒否されることはないという。タイ入国の際に、検疫官が無作為に保険証の提示を求めることとなっており、仮に保険に加入していない乗客が検疫官に提示を求められた場合は、タイに入国する(イミグレーションを通過する)前に保険に加入する必要がある。これらの規則は、1月10日〔午前1時、協定世界時(UTC)〕から31日(午後4時59分UTC)までの間に施行となる。

今回の通知(1月10日)は、中国が1月8日から国民の外国渡航を許可したことを受け、タイ政府が数日前に出した2つの通知に続いて発表された。前の2つの通知では、外国からの旅行者にワクチン接種証明の提示を義務付けていた。しかし、こうした方針は、観光業に影響を与えるとして、各国の旅行代理店やタイ観光協会から政府への苦情が相次いだという。プーケット観光ビジネス協会チーフアドバイザーのプーミキット・ラックテーガーム氏によれば、各国の旅行代理店を通じて、ワクチン接種未完了者やワクチン未接種者から多数の渡航やパッケージツアーなどのキャンセルが発生していた。しかし、航空会社はそうしたキャンセルに対して返金をしないため、旅行業者の事業に、大きな損害が生じているとの連絡が入っていたという。今回のワクチン接種証明提出義務付けの撤回は、こうした産業界の声に配慮したものとみられる。

(注)タイへの帰国者、タイで労働許可証を保有している者など一部例外あり。詳細は保健省疾病管理局外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのウェブサイトを参照のこと。

(ナオルンロート・ジラッパパー、藤田豊)

(タイ)

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