2022年の建設受注高は前年並み、2023年以降も公共工事が牽引へ

(シンガポール)

シンガポール発

2023年01月16日

シンガポール建設庁(BCA)は1月12日、2022年の公共と民間工事を合わせた建設受注高(埋め立て工事を除く)が暫定値で298億シンガポール・ドル(約2兆9,204億円、Sドル、1Sドル=約98円)と、ほぼ前年並みだったと発表した(添付資料表参照)。同国の建設受注高は2020年に新型コロナウイルス感染拡大の影響で前年比37%減と大幅に落ち込んだ後、2021年に人件費や建設資材コスト増などにより、前年比42%と大幅増加していた(2022年1月28日記事参照)。

2022年は、前年と同様に公共工事が179億Sドル(前年比0.4%増)と、建設受注高の6割を占めた。同年の大量高速鉄道(MRT)と関連工事の建設受注高は約60億Sドルと、公共土木の受注高(86億Sドル)の大半を占めた。その他、公共工事の主な案件では、公団住宅(HDBフラット)や公立医療施設などがあった。一方、民間の建設受注高は前年比1.4%減とやや減少した。

BCAは、2023年の建設受注高を「270億~320億Sドル」と、2022年とほぼ変わらないとの予測を明らかにした。同庁は「世界経済の見通しが不透明な上、主要国経済の減速が民間工事に影を落としているため、建設受注が大きく拡大することはない」との見方を示した。2023年の建設受注高のうち、公共工事が「160億~190億Sドル」と6割を占める見通しだ。

また、BCAは2024~2027年の年間建設受注高について、「250億~320億Sドル」との予測を示した。このうち、公共工事が「140億~180億Sドル」と、引き続き建設受注高の約6割を占めると見込んでいる。なお、2024~2027年の予測には、チャンギ空港の新第5ターミナルと、統合型リゾートの拡張工事については工事開始時期が未定のため、含まれていない。

建築工事入札価格指数、サプライチェーン混乱による資材高で過去最高に

一方、BCAの建築工事入札価格指数(TPI)は2022年に、世界的なサプライチェーン混乱に伴う建設資材の高騰により、推定で前年比約11%上昇した。同指数は新型コロナウイルス流行前の2020年第1四半期と比べて約30%上回る水準だった。また、2022年のTPIは従前の最高値だった2008年第3四半期を上回り、過去最高となった。BCAは2023年のTPIの見通しについて、一部建設資材価格が下落に転じ、世界経済の減速が予想されるため、入札価格が軟化すると予想している。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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