カナダ政府、量子コンピュータ・スタートアップの商業化に向け4,000万カナダ・ドルを出資

(カナダ)

トロント発

2023年01月25日

カナダのジャスティン・トルドー首相は1月23日、量子コンピューティングのスタートアップ、ザナドゥ・クォンタム・テクノロジーズ(本社:オンタリオ州トロント)による世界初のフォトニックベースの耐障害性量子コンピュータの構築・商業化に向け、連邦政府が4,000万カナダ・ドル(約38億8,000万円、Cドル、1Cドル=約97円)の出資を行うと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同コンピュータが開発されれば、複雑なデータが絡む問題解決に向けて世界に先駆けた性能を提供できる可能性があり、金融、交通、環境モデリング、ヘルス分野などでの活用が期待されているという。

総額1億7,780万Cドルの同事業に対し、連邦政府は「戦略的イノベーションファンド」を通じて支援を行う予定で、ハイテクおよび量子コンピューティング分野で新たに530人の高度技能人材の雇用が創出される見込み。

大学、政府、業界の代表者で構成されるカナダ国立研究評議会の委託調査によると、2045年までにカナダの量子産業は、波及効果を含めると1,390億Cドル規模の産業となり、20万人以上の雇用を創出すると試算されている。2023年1月初めに、カナダ政府は「国家量子戦略」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、カナダを量子技術の世界的リーダーとしての地位を確立すべく、3億6,000万Cドルを追加投資すると発表していた。連邦政府は、今回のザナドゥへの出資のほか、2021年にも量子コンピューティングのパイオニアであるDウェーブ・クォンタム(本社:ブリティッシュコロンビア州バーナビー)に前述のファンドを通じて4,000万Cドルの出資を行っている。

トルドー首相は出資に関する記者会見で、「量子技術は、われわれが知っている世界を変えつつある。ヘルスケア、金融、気象学などの主要分野における難題を解決する可能性を秘めており、この分野の可能性は広がっている」と述べた。

ザナドゥのクリスチャン・ウィードブルック最高経営責任者(CEO)は「政府の量子技術への継続的な投資は、当社の成功にとって非常に貴重だ。われわれはカナダの企業であることを誇りに思うとともに、今回の投資により、世界中の人々が利用でき、また人々の役に立つ量子コンピュータを作るというわれわれの使命において、次の段階に入ったことをうれしく思う」と語った。

(飯田洋子)

(カナダ)

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