米エネルギー省、核融合技術で画期的進展を発表、投入量以上のエネルギー生成に成功

(米国)

ニューヨーク発

2022年12月15日

米国エネルギー省(DOE)と国家核安全保障局(NNSA)は1213日、核融合反応において投入量以上のエネルギーの生成に成功したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

核融合反応とは、質量の小さな原子核同士が融合し、より質量の大きい原子核に変わる反応で、この際に大きなエネルギーが生成される。このエネルギーを利用する核融合発電は、その過程で温室効果ガス(GHG)を排出せず、安全性の観点でも優れていることから、長年米国など各国で研究されてきた(注)。

発表によると、実験はカリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所において行われ、反応を起こすために2.05メガジュール(MJ)のエネルギーを投入したのに対し、核融合反応からは3.15MJの出力が得られたという。反応から得られたエネルギーが、反応のために投入されたエネルギー量を上回る「核融合点火」の成功は、今回が初めてとなる。

DOEは実験の成功について、「国防とクリーン電力の将来に道を開く、数十年来の大きな科学的突破口となるもの」とした。また、DOEのジェニファー・グランホルム長官は記者会見で、「核融合のブレイクスルーは歴史に残るだろう」「これこそが米国がリードする姿だ」と述べた。一方で、同技術の実用化に当たってはコスト面などの課題も多く、さらなる研究開発が必要としており、専門家はその実現には数十年かかると予想する(ブルームバーグ1213日)。

民間部門でも、核融合技術開発に向けた動きは活発になってきている。米国核融合産業協会によると、民間での核融合産業の資金調達は2021年から28億ドル増加しており、投資家の中にはビル・ゲイツ氏やグーグルなど著名人や大企業が名を連ねる。今回の発表と相まって、官民双方で核融合技術開発は今後さらに活発になりそうだ。

(注)原子力発電は、質量の大きな原子核がより質量の小さな原子核に分裂する、核分裂反応から生じるエネルギーを利用した発電方法で、その反応は核融合反応と異なる。

(宮野慶太)

(米国)

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