欧米企業撤退で懸念される通信環境、ロシア側は楽観視

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2022年12月28日

欧米企業がロシアから撤退を進める中で、ロシアの携帯電話通信環境の悪化を懸念する声が出ている。同国の通信業界関係者によると、関連ハードウエアの予備部品の在庫減少、また、ソフトウエアのアップグレードやパッチの適用ができなくなることで、携帯電話ユーザーはダウンロードやアップロードの速度低下や、意図しない通話の切断の増加、長期にわたる通話の不能状態に直面する恐れがある(「ロイター通信」12月21日)。

これに対し、ロシアのデジタル発展・通信・マスコミ省は、外資系通信企業がロシアから撤退してもロシアの通信市場に大きな影響はないと強気の見方を示す。同省のマクスト・シャダエフ大臣は12月20日の連邦下院で、大手移動通信事業者(ロステレコム、メガフォン、ビンペルコム、MTS)がロシアのメーカーから総額1,000億ルーブル(約1,900億円、1ルーブル=約1.9円)を超える第4世代移動通信システム(4G)と5G通信の基地局用機材を購入することを明らかにした。

メガフォンのハチャトゥル・ポンブフチャン最高経営責任者(CEO)は、欧米主要メーカーの撤退や事業停止でも通信の品質は低下しておらず、現状のままでも既存ネットワークは5~7年は維持できるとしている(ビジネス・メディア「RBK」12月5日)。

スウェーデンの通信機器・サービス大手エリクソンは2022年4月11日にロシアでの事業を停止し、夏以降撤退プロセスを進めている(「コメルサント」紙8月29日)。同社は12月15日、ロシアでのカスタマーサポート事業を同社ロシア拠点の元運営責任者が所有するロシア法人に売却すると発表した。フィンランドのノキアは4月12日にロシアからの撤退を発表する一方、事業移転の移行期間中もネットワークの維持に必要なサポートを提供することを表明していた。

西側諸国は対ロ制裁として通信機器の輸出規制を導入している。しかし、機材の供給は一定程度維持されるとの見方がある。メガフォンのポンブフチャンCEOは、ノキアは合計4つのロシア向け通信機器輸出ライセンスを米国と欧州の規制当局に申請しており、うち1つは既に承認されたとする(「RBK」12月5日)。同ライセンスの申請は、機器の新規供給ではなく、既存のネットワーク維持・補修向けの交換部品とみられる(「RBK」11月8日)。

(欧州ロシアCIS課)

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