国際人材競争力ランキング、アジア大洋州から複数国が上位に

(ASEAN、南西アジア、オセアニア)

アジア大洋州課

2022年12月20日

国際経営開発研究所(IMD)は128日、各国・地域の人材競争力を分析したレポート「国際人材競争力ランキング2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公表した(注1)。世界63カ国・地域を対象に、主に3つの項目(人材育成への投資、労働環境の魅力、人材の能力・技術レベル)から調査・評価している(注2)。

調査対象となったアジア大洋州(ASEAN、南西アジア、オセアニア)の主要国および日本は、総合評価で上位からシンガポール(12位)、オーストラリア(18位)、ニュージーランド(31位)、マレーシア(33位)、そして日本(41位)と続く。また日本に次いで、タイ(45位)、インドネシア(51位)、インド(52位)、フィリピン(54位)の順に評価されている(添付資料表参照)。

評価項目別でみると、シンガポールは「人材の能力・技術」(1位)と「労働環境の魅力」(13位)が同国の総合評価の高さを牽引。オーストラリアも「労働環境の魅力」(14位)が相対的に高く、かつ全項目で前年より順位が上昇。他方、ニュージーランドは全項目で順位を前年より下げている。また、「人材の能力・技術」の項目では、インドは前年より9ランク、フィリピンは12ランクも順位が大きく上昇した。同レポートは、アジア大洋州の一部の国は、自国の人材開発投資が不十分だったが、その分を補うため、海外の高度人材誘致に注力する傾向があった、と分析する。

世界全体の特徴としては、新型コロナ禍、渡航規制により人材の国際移動は制限されたが、高い能力を有する人材は、オンラインにおいて、国・地域を問わず業務が可能だったと分析している。

他方、世界的にリモートワークが普及したが、新型コロナウイルス感染状況が改善するつれ、企業は再び従業員に出社を求める傾向にある。こうした対応が、今後の労働者の就職先の選択、人材の流出などにいかに影響するかが注目されると指摘している。

その上で、今後、企業が競争力を高めるには、従業員のモチベーション向上が鍵と説明する。そのためには、高額な報酬だけでなく、従業員の生活の質向上への取り組み、ビジネスにおける経営陣の能力や経験値も重要になると分析する。

今回高く評価された国・地域は、人材育成制度が充実、魅力的な就労環境が整っていると説明する。特に、中長期的な人材育成には、基礎教育制度のほか、企業による研修やインターンシップなどの実施も重要だと分析している。

(注1)国際経営開発研究所(IMD)はスイスに拠点を置くビジネススクール。本調査で世界ランキング1位はスイス、2位はスウェーデン、3位はアイスランドと、欧州が上位を占める。

(注2)3つの評価基準は、さらに31の細かい項目に再分類。各項目につき、各国・地域の状況を分析・評価している。

 (田口裕介)

(ASEAN、南西アジア、オセアニア)

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