ウクライナがアフリカ向け食糧支援プログラムを発表

(ウクライナ、アフリカ)

中東アフリカ課

2022年12月12日

ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は11月26日、人道支援の一環として、深刻な食糧不足にあえぐアフリカなどの国々に対して無償で穀物を提供する「グレイン・フロム・ウクライナ」プログラムを実施することを発表した。同日、ウクライナの首都キーウで開催された食糧安全保障に係る国際サミットにおいて表明された。EUなどの20カ国以上が総額1億5,000万ドルを拠出して実施されるもの。

支援の対象となる国は、エチオピア、スーダン、南スーダン、ソマリア、コンゴ民主共和国、ケニア、ナイジェリア、イエメンなど。報道によると、既にウクライナのオデーサ港から送られたエチオピア向けの2万5,000トンの穀物が12月5日にジブチ港に到着したという。

ウクライナのドミトロ・クレバ外相が10月にセネガルなどを訪問するなど、アフリカ諸国との関係強化のため外交を積極化させている。2022年3月のロシアのウクライナ侵攻に対する非難決議では、エリトリアが反対したほか、アフリカの多くの国が棄権ないし不参加を選択した。10月のロシアによるウクライナ4州の併合を無効とする国連総会決議でも24カ国が棄権ないし不参加となっている(2022年10月17日記事参照)。

クレバ外相は、11月28日にオンラインでプレス会見し、同支援プログラムの実施は、ウクライナへの政治的サポートがこの食糧援助を受け取る条件ではないとしつつも、国連におけるロシア非難決議において、アフリカから多くの国が棄権や無投票に回ったことを挙げ、中立のままでいるべきではないと、ウクライナ支持に回るようあらためて要請した。

アフリカ諸国は、2021年にはウクライナから30億ドル以上の穀物を輸入するなど、アフリカ諸国にとってウクライナは食糧の主要な供給地の1つとなっている。ウクライナとロシアの戦争の長期化により、供給が滞り、アフリカ諸国の食糧価格は急騰、国民の生活は困窮している。また、エチオピアやソマリアなどアフリカ東部では干ばつによる被害で食糧危機が深刻化している。

(佐藤丈治)

(ウクライナ、アフリカ)

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