フィンランド、エネルギー危機で原子力への態度に変化

(フィンランド)

ロンドン発

2022年12月15日

フィンランドのシンクタンクEVAは12月10日、同国のエネルギー事情に関する意識調査結果(注)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。回答者の約7割が国内発電量増加のための最良の施策として、原子力発電所の追加建設を挙げた(2019年比25ポイント増)。原子力発電に対して否定的な者は10%、廃炉を求める者は4%と少数になっている。87%が原子力発電の段階的廃止を否定している。原子力発電所への態度の変化の背景には、今回のエネルギー危機の中で再生可能エネルギーの急激な増産だけでは対応しきれないとの見方があるとみられる。

また調査結果によると、ロシアからの電力輸入に対しては87%が否定的である一方、北欧諸国やエストニアからの電力輸入に対して69%が肯定的となっている。

さらに、燃料価格の上昇が、省エネや化石燃料からの脱却を促すとして肯定的にとらえる者が53%と半数を超えた。2020年春の調査では燃料価格の上昇を肯定的にとらえた割合は33%となっており、20ポイントの増加となった。

地場エネルギー企業は各国企業と連携

フィンランドのエネルギー企業フォータムとフランス電力(EDF)は12月8日、小型モジュール炉(SMR)および大規模発電所の設置に関し、協力機会を探るための協力枠組みに署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。さらにフォータムは11月25日、ヘルシンキ市が保有するエネルギー企業ヘレンと原子力発電およびSMRに関する共同研究を開始することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。いずれも、フォータムが実施する、フィンランドとスウェーデンでの原子力発電新設の要件調査の一環としている。フォータムは10月にも東京電力ホールディングスとの間で原子力分野に係る情報交換協定を締結外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、安全の向上に資する経験や実践事例を共有するとしている。

なお、ヘレンは2021年12月に、それまでの予定を早め、ヘルシンキの2つの石炭火力発電所について、それぞれ2023年4月と2024年4月に閉鎖することを発表し、カーボンニュートラルな発電への移行を加速させるとしている。

(注)オーランド諸島を除くフィンランド全国における、18歳から79歳までの2,088人からの回答に基づく。

(島村英莉、半井麻美)

(フィンランド)

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