議会がカスティージョ大統領を罷免、後任に初の女性大統領
(ペルー)
リマ発
2022年12月14日
ペルー議会は12月7日、ペドロ・カスティージョ大統領を解任した。モラルの欠如による職務不適任として、議会は大統領罷免を求める議会決議案第001-2022-2023-CR号を賛成102票、反対6票、棄権10票で可決した。さらに、憲法の規定にのっとり、大統領職の継承順位1位のディナ・ボルアルテ副大統領が第52代大統領に就任し、ペルー史上初の女性大統領となった。反対票を投じた議員は、カスティージョ大統領を擁立した急進左派のペルー・リブレ(ペルー自由:PL)党の3人のほか、同党を離党して結成した左派のペルー・デモクラティコ(ペルー民主主義:PD)党の1人、ブロケ・マヒステリアル・コンセルタシオン・ナシオナル(教員団体国家連合:BMCN)党の1人、ペルー・ビセンテナリオ(建国200周年ペルー:PB)党の1人だった。棄権票の10人には、カスティージョ政権で初代首相を務めたギド・ベジード・ウガルテ議員(元PL党で現在無所属)や、投票直前に通商観光相を辞任したロベルト・サンチェス・パロミーノ議員らも含まれている。
今回の罷免の発端は、議会6党と無所属の計67人が11月29日付で提出したカスティージョ大統領に対する3回目の罷免決議案(注1)。12月6日にカスティージョ大統領が行った国民放送演説では、同決議案の論拠は事実無根として自身の潔白を主張した。しかし、翌7日に汚職疑惑の関係者(注2)が国家検察に対してカスティージョ大統領への謝礼金支払いを証言したため、大統領は再び国民放送演説を行い、議会の解散を急きょ宣言した。これに対して憲法裁判所(TC)は、解散宣言は憲法違反と確認したため、議会はあらためて大統領の罷免動議を行い、解任に至った。その後、カスティージョ大統領は在ペルーのメキシコ大使館に向かう途中で国家警察によって拘束され、現在も勾留されている。
経済界からは、ペルー経団連(CONFIEP)が「カスティージョ氏の国家に対するクーデターの試みに対して、憲法と制度の秩序が守られたことを歓迎し、ボルアルテ新大統領の就任を歓迎する」とした上で、新大統領に対して国民や各政党との対話構築や、有力な組閣、汚職撲滅、行政能力の回復を求める声明を発表している。
(注1)罷免決議案は「不正疑惑のある閣僚の任命責任」「汚職グループの首謀者としての疑惑」「学位論文の盗作疑惑」の3本柱の論拠で構成されている。
(注2)国家検察庁が議会に提出した訴状で、住宅建設衛生省の汚職(2022年10月19日記事参照)の謝礼金支払いに関わった企業家と元住宅建設衛生省の顧問長の2人。
(設楽隆裕)
(ペルー)
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