統一地方選で与党・民進党が敗北、蔡英文総統が同党主席を辞任

(台湾)

中国北アジア課

2022年11月29日

台湾で11月26日、4年に1度の統一地方選挙が行われた。その結果、22ある県市の首長選のうち(注)、与党・民進党が獲得したポストは5つにとどまり、最大野党・国民党に大敗した2018年の前回選挙からさらに1席ポスト減らした。他方、国民党は13ポストを獲得。このほか、民衆党が1ポスト、無所属が2ポストを獲得した(添付資料表1参照)。人口の約7割を占める6直轄市についてみると、国民党は台北市、新北市、桃園市、台中市の4市のポストを獲得したが、民進党は台南市と高雄市の2市にとどまった(添付資料表2参照)。

台北市長選挙については、国民党の蒋萬安氏が当選。蒋氏は蒋経国元総統の孫で、弁護士資格を有する。43歳という若さから国民党のホープとされている。同市長選は、中央流行感染症指揮センター(CDC)で新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染対策の指揮官を務めた民進党の陳時中氏、柯文哲・前台北市長政権下で副市長を務めた無所属の黄珊珊氏の三つどもえの争いとなったが、陳時中氏は新型コロナ感染対策の不備などへの批判をかわせず、次点となった。

蔡英文総統は同日夜に記者会見を開き、選挙結果の責任を取って民進党主席を辞職すると発表。「今回の結果は、地方における民進党の政権運営と人民の期待に少なからぬ距離があることを示しており、地方のニーズを深く掘り起こすことや人材の育成も不十分だった」と述べた。

今回の地方統一選は2024年に行われる総統選挙の前哨戦に位置付けられているが、この選挙結果を受けて国民党が総統選で優位となるかについては、また別の問題との見方も少なくない。米国に本部を置くジャーマン・マーシャル財団(GMF)のボニー・グラサーアジア計画主任は「台湾の地方選挙では、内政と候補者の人柄が主な焦点であり、2024年の総統選のバロメーターにはならない」と指摘(「TVBS新聞網」11月27日)。11月26日付の現地紙「聯合報」は「今回の選挙結果により国民党の支持者は2024年に向けて自信を深めることになったが、国民党は親中というラベルをどのようにはがすかといった問題が引き続き残っている」とした。

なお、今回の統一地方選と併せて、成人年齢を現行の20歳から18歳に引き下げる憲法改正案の賛否を問う公民投票も行われた。成立には有権者数の過半数である約962万票以上の同意が必要だったが、同意票は約565万票にとどまり、不成立となった。

(注)22県市のうち、今回選挙が行われたのは21県市。嘉義市長選は候補者が死去したため、12月18日に延期された。

(江田真由美)

(台湾)

ビジネス短信 e63adab09904673f