米連邦取引委、不公正な競争に対する法執行強化の方針発表

(米国)

ニューヨーク発

2022年11月16日

米国連邦取引委員会(FTC)は11月10日、不公正な競争方法を禁じる連邦取引委員会法(FTC法)を厳格に執行する政策方針を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。政策方針は、FTCの4人の委員のうち、リナ・カーン委員長を含む民主党委員3人の賛成により採択した(注)。

FTCが執行を強化するのは、FTC法5条だ。同条は「商業活動における、またはそれに影響を与える不公正な競争方法」を禁じている。FTCは2015年にFTC法5条について、同法とともに米国の反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)を構成するシャーマン法とクレイトン法の枠組みに沿い、実際に反競争的な影響をもたらす見込みがある場合に執行を行う方針を発表した。しかし、この方針が不公正な競争方法を取り締まるFTCの法執行権限を制限するとの理由で、FTCはリナ・カーン現委員長就任後の2021年7月に同方針を撤回外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。

FTCは2015年の方針の撤回を受け、今回の政策方針で、ある行為が不公正な競争方法に当たるかどうかを判断する際の一般原則を示した。具体的には、FTC法5条の適用範囲はシャーマン法とクレイトン法のそれにとどまらず、競争条件に負の影響を与える性質を持つ不公正な行為を広く含むことを明確化した。FTCは、FTC法の目的は独占の初期段階での阻止にあるとし、独占が発生した後に実際に見られる反競争的な影響を法執行の要件とするのはFTC法の立法趣旨に反すると指摘した。加えて、不公正な競争慣行が必ずしも測定可能な影響を伴うわけでないと言及した。

FTCは今回の政策方針で、不公正な競争方法について「能力に基づく競争を避けて優位性を追求し、市場での競争を減じる性質のある手法」と説明している。競争条件への影響に関しては、ある行為が直接的に負の実害をもたらしているかどうかは問わないと明示した。また、複数の主体による行為を総体として見た場合などにも負の影響は起こり得ると記した。

カーン委員長は記者向け説明会で、FTCは反トラスト法で禁止されている独占化行為などには至らない慣行の追及にFTC法を活用できるようにすべきとの考えを示し、今回の政策方針が競争を損なう行為を行う企業に対するFTCによるより多くの訴訟に道を開くと述べた(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版11月10日)。一方、産業界はFTCの決定に警戒を強めており、米国商工会議所は「FTCの政策方針は、企業がいつ、どこで、どのように競争するかについて、カーン委員長に白紙委任状を与えることを目的とした、純粋な政治的権力の掌握だ」と批判する声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

(注)FTC委員は、連邦上院で承認された委員5人で構成される。任期は7年。委員の中から大統領が委員長1人を任命する。2022年11月15日現在、民主党3人、共和党1人、欠員1人。委員は各政党に所属しており、同じ政党から委員が4人以上選ばれないよう決められている。

(甲斐野裕之)

(米国)

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