欧州産業連盟、EUの2023年GDP成長率予測を0.6%に大幅下方修正

(EU)

ブリュッセル発

2022年11月09日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は11月7日、「秋季経済見通しPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表し、2022年と2023年のEUの実質GDP成長率はそれぞれ2.8%、0.6%との予測を示した。2023年については、前回の夏季経済見通しで2.1%と予測したが、大幅な下方修正となった。また、EUのインフレ率については、2022年は8.8%、2023年は5.6%との見通しを示した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

ビジネスヨーロッパは、2022年上半期は新型コロナウイルス感染が収束傾向となり、事業を再開したサービス部門が牽引して、EU経済は好調を取り戻したが、この数カ月で企業の景況感が急速に悪化したと指摘。エネルギー価格の高騰や、継続するサプライチェーンの混乱により、企業のコストが消費者物価よりもさらに急速に上昇する中、収益が減少し、消費者の需要低下も予測されることから、生産を減らす企業も少なくないと述べた。

エネルギー危機対策や投資促進や企業の資金調達に関して提言

2023年に向けて失望感が漂う予測となったが、ビジネスヨーロッパは、EU経済の今後は「エネルギー価格の動向」と「サプライチェーンへの負荷の緩和」「時機にかなった包括的でバランスの取れたエネルギー危機対応策」にかかっているとした。その上で、EUに対して、企業のエネルギーコスト負担を緩和する新たな措置について、速やかに合意するように求めた。特に、EUレベルで電力価格とガス価格の一時的な切り離しを行う措置や、単一市場の公正な競争を維持しながらも、加盟国が必要な企業支援を実施できるように柔軟性を与えることが必要だとした。

消費者や企業向けのエネルギーコスト支援については、加盟国による財政出動の余地が限られていることから、一時的で的を絞ったものとするよう求めた。財政規律の確保のための「安定・成長協定(SGP)」の改定について速やかに合意することや、新型コロナ危機からの経済復興パッケージの中核を成す「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」など公的資金を効率よく活用し、長期的な投資の成長を導くことも必要だとした。

また、欧州中央銀行(ECB)が連続して主要金利を引き上げているが、さらなる金利引き上げが経済成長を阻む追加要素となる可能性があるとしつつも、インフレ率を抑制する手段として理解を示した。その上で、労使双方が賃金・物価の負のスパイラルを回避する努力をしていかなければならないとした。

さらに、金利の連続引き上げを踏まえ、政策立案者は企業の借り入れコスト上昇を注意深く監視し、銀行借り入れや社債発行による資金調達ではなく、新株発行を伴う資金調達といった他の手段による企業の資金調達を容易にすべきだとした。EUでは、グローバルに事業展開する金融機関に対して自己資本の強化を求める国際的な金融規制「バーゼルIII」の完全実施に向けたEU域内の規制の改正が進められている。ビジネスヨーロッパは「バーゼルIII」の段階的な適用に当たり、欧州企業に対する融資の継続や国際競争力の維持のための保護が必要だとも主張した。

(滝澤祥子)

(EU)

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