第10代首相に希望連盟アンワル氏、事実上の政権交代へ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年11月25日

マレーシアで11月19日に投開票が行われた総選挙(2022年11月24日記事参照)で、最大の得票数を獲得した政党連合・希望連盟(PH)のアンワル・イブラヒム元副首相が、第10代首相に任命された。24日夕刻に王宮で就任宣誓を行った。新首相は就任後初の記者会見で、経済の回復と腐敗との闘いに意欲をみせた。

総選挙では、82議席を獲得したPH含め、主要政党連合がいずれも単独過半数の議席数に届かなかったため、開票後5日間にわたり連立樹立に向けた激しい交渉が続いていた。政局の膠着(こうちゃく)状態を打開すべく国王が仲裁に入ったことで、連邦議会下院の過半数を超える連立が確立される見通し。30議席を獲得した国民戦線(BN)や東マレーシアの諸政党などが、PHとの連立に参加する、と報じられる。BNが国民同盟(PN)や地域政党などと連立与党を構成していた前政権から、事実上の政権交代が実現することとなる。アンワル氏の首相任命を受け、政局不安の後退が好感され、対ドルのリンギ相場の終値は、前日比0.08リンギ高の1ドル=4.495リンギに上昇。9月9日以降で初めて4.4リンギ台となった。

マレーシアの独立系シンクタンク、民主主義経済問題研究所(IDEAS)は24日、新政権が民主主義に対する国民の信頼を得るには、政治的安定性の確保に最優先で取り組むべきだ、と訴えた(IDEASプレスリリース)。経済回復のためには、過去2年半の政情不安を早急に解消しつつ、インフレ率の管理、リンギの強化、社会的セーフティーネットの改善、的を絞った低所得層への支援、公的債務の管理といった、喫緊の経済課題に対処することで、将来的な諸問題に備えることが重要とした。とりわけ10月に提出され棚上げ状態にある2023年度国家予算については、2022年末までに上程されるべきだと付け加えた。

なお、アンワル新首相は新政権の発足に伴い、11月28日を国民の休日にすることを宣言した。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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