「個体工商戸発展促進条例」公布、小規模企業の権利を保護

(中国)

北京発

2022年11月02日

中国の国務院(内閣)は10月25日、「個体工商戸発展促進条例」(国務院令第755号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、新条例)を公布(文書は10月1日付)、11月1日から施行された。個体工商戸(注1)の発展に向けた方針を条例で定めたもの。これまで個体工商戸に適用されてきた「個体工商戸条例」(以下、旧条例)は廃止となる。

旧条例は個体工商戸の権利保護のほか、政府による管理・監督が主な目的だったのに比べ、新条約は発展促進に重点が置かれている。

個体工商戸の保護されるべき権利について、旧条例では「合法的権益」とだけ記載されていたが、新条例では「財産権」「経営自主権」と具体的な権利内容が挙げられた。

新条例では、政府の各部門は個体工商戸に対して税制面での支援、創業支援、職業技術訓練、社会保障、金融サービス、登記・登録、権利保護などの面で支援策を策定するとともに、国務院は部門をまたいだ協調を行うと定められた。また、各地方政府は、個体工商戸の発展を経済・社会発展計画に組み入れ、支援を行うべきであるとされた。

個体工商戸に対する政府や企業による不利な取引条件の押し付けや、契約に反した支払い遅延なども禁止された。地方政府は個体工商戸の質を向上させるべきであるとし、登記数の増加率を業績評価指標としてはならないとした。政府のプロジェクト実施や調達、入札などで差別的な扱いをすることも禁じる。

その他、オンラインプラットフォーム運営者は個体工商戸のデジタル化に向けた支援をすべきとして、サービス協議やプラットフォーム規則、アルゴリズムなどにより個体工商戸に対して非合理的な制限や費用徴収をしてはならないとされた。

一方で、第3条には「個体工商戸の発展促進業務は共産党の領導を堅持し、党組織の個体工商戸発展における牽引作用と党員のパイオニア・模範作用を発揮する」「個体工商戸の党組織と党員は共産党規約に基づき党の活動を行う」との内容が追加され、党の関与を強化する様子もみられる。

国家市場監督管理局によれば、2022年9月末時点の個体工商戸の登記件数は1億1,100万件、中国の市場主体(注2)の3分の2を占め、就業者数は約3億人に達する。一方で、新型コロナウイルス予防措置などの影響もあり、個体工商戸のうち57.9%が赤字とされている。同局は、新条例の発表は「党と政府の個体工商戸への関心と配慮を表したもの」としている。

(注1)企業資産が経営者の私的所有に属し、被雇用者が7人以下の私営企業。

(注2)中国内で営利を目的とした経営を行う自然人、法人、非法人組織の総称。

(河野円洋)

(中国)

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