上海米国商会の調査、今後の中国のビジネス環境への楽観的な見方が55%で過去最低水準に

(中国、米国)

北京発

2022年11月07日

中国の上海米国商会は10月28日、2022年の中国ビジネスに関する報告書の概要を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同報告書は1999年以降、毎年作成されており、今回は2022年7月から8月にかけて実施した会員企業への調査を基に作成された(注1)。発表によると、回答企業のうち、2022年の売り上げが前年比で増加する見込みとの回答は47%と、2021年の同回答比率より29ポイント下落し、過去10年で最低水準となる見通しとなっている。また、今後3~5年の間に中国事業の売り上げの伸びが世界全体の伸びを上回るとの回答は、前年から22ポイント下落して47%となった。2021年の業績については75%が黒字だったと回答したものの、過去数年よりも若干低い結果だった。

今後の事業展開については、30%が中国への投資を前年より増やすと回答した一方、19%が前年より投資を減らすとした。投資を増やす主な理由は中国市場の成長性、減らす理由は中国の新型コロナウイルス防疫規制となっている。今後5年の中国ビジネスの見通しについては、「楽観」あるいは「やや楽観」が55%(前年から23ポイント下落)と、同調査史上最低水準となった。

また、中国向けに計画していた投資を他地域へ振り替えたと回答した企業が3分の1で、前年の約2倍になった一方、今後1~3年以内に中国の事業や拠点を中国外に移転することを検討しているとの回答は17%(53社)に、そのうち米国への回帰を検討しているとの回答は移転を検討するとした企業の19%にとどまった。85%が、新型コロナ防疫規制が移転の決定に影響を与えたと回答した(注2)。

当局の政策・規制に対する見方についても、悪化の傾向が見て取れる。全体の52%が中国政府の経済運営に対する本社の信頼が低下したと回答した。また、外資に対する政策や規制が改善したとの回答は17%(19ポイント下落)だった一方、悪化したは14ポイント上昇して36%だった。さらに、自社の業界に対する規制に透明性があるとの回答は前年から10ポイント下落して37%となったほか、政府の政策が地場企業により親和的になっているとの見方を示す企業が56%と、2017年以降で最も高い水準となっている。上海米国商会のSean Stein会長は、回答企業は特にサイバーセキュリティーや、データローカライゼーション、知的財産権保護、調達における現地化の要求といった問題に直面しており、かつ、前年よりもこれらの問題による影響が大きくなっていると説明している。

(注1)同調査には上海米国商会の会員企業のうち307社が回答した。

(注2)他方、中国からの事業や拠点の移転を検討する最大の理由は米中関係となっている。

(小宮昇平)

(中国、米国)

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