ブラジル東北部を中心に欧州系企業がグリーン水素投資案件を推進

(ブラジル)

サンパウロ発

2022年11月24日

ブラジルでのグリーン水素の生産・貿易・技術について議論するセミナー「第1回ハイドロジェン・ダイアログ・ラテンアメリカ(Hydrogen Dialogue Latin America)」が11910日の2日間、サンパウロ市内で開催された。本セミナーはドイツのニュルンベルクメッセ主催のイベント「Hydrogen Dialogue」(2022年9月30日記事参照)のブラジル版として、在ブラジル・ドイツ商工会議所と物流系情報メディアのギア・マリチモとの共催で開催された。ドイツ商工会議所の1110日付公式サイトによれば、オンラインと対面での参加者数は300人以上だった。

2日間で計15のパネルディスカッションや講演会が実施され、ブラジルにおけるグリーン水素(注1)の生産可能性について議論が行われた。その議論の中では、ブラジルの利点として、グリーン水素を生産するための再生可能エネルギーが豊富であることが強調された(注2)。一方、グリーン水素の生産に向けた投資拡大、生産コストの低減、物流を改善することなどが、今後検討すべき問題として指摘された。

ブラジル経済省傘下の応用経済研究所(IPEA)が8月に発表した報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、ブラジル北東部は風力発電と太陽光発電双方の運用によい条件がそろっている。さらに、グリーン水素の活用を積極的に推進する欧州向けの港湾も存在するため、ブラジルの中でグリーン水素の重要な拠点になり得るとしている。北東部ではいまだグリーン水素の大量生産は開始されていないが、270億ドル以上の投資案件が既に発表されたという。また、同報告書によると、ブラジル全体でグリーン水素関連の36の投資プロジェクトが確認され、そのうち23のプロジェクトがブラジル北東部で、うち14プロジェクトがセアラ州ペセン港に集中している。全国のプロジェクトをみると、12件はブラジル企業によって展開されているが、欧州系企業による案件は18件と多く、うち7件はドイツ企業のプロジェクトとなっている。

次回の「Hydrogen Dialogue Latin America」は2023102526日にサンパウロ市で開催する予定となっている。

写真 セミナーの様子(ジェトロ撮影)

セミナーの様子(ジェトロ撮影)

(注1)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程で二酸化炭素を排出しない。

(注2)エネルギー調査公社(EPE)が6月に発表した資料によれば、2021年のブラジルの電力マトリクスは、水力が53.4%、バイオマス8.2%、風力10.6%、太陽光2.5%など、再生可能エネルギーが大部分を占めている。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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