マスク氏、米ツイッターとの裁判回避狙い、買収合意を再度提案

(米国)

サンフランシスコ発

2022年10月07日

米国の電気自動車(EV)メーカー、テスラなどの最高経営責任者(CEO)を務めるイーロン・マスク氏の代理人は10月3日、米証券取引委員会(SEC)に書簡を提出し、ツイッターの買収について、同社と4月25日までに合意していた内容で手続きを完了させる意思を表明した。

ツイッターはマスク氏の同社買収撤回(2022年7月12日記事参照)を巡り、マスク氏を提訴していた。マスク氏は今回の書簡で、買収を完了させる条件として、デラウェア州衡平裁判所がツイッターのマスク氏に対する訴訟を差し止め、公判の閉廷と、これに関連した訴訟を中止とすることなどを挙げている。

今回、マスク氏がツイッターとの裁判を回避し、あらためて買収を完了させようと動き出した背景には、デラウェア州衡平裁判所のキャサリン・マコーミック裁判官が10月3日にツイッターに対し、マスク氏と同社の内部告発者ピーター・ザトコ氏の関係について調査することを許可したことなどが関係しているとする見方がある(「テッククランチ」10月4日)。ザトコ氏はツイッターの元セキュリティー責任者で、9月13日には連邦上院司法委員会の公聴会で同社のデータセキュリティーの脆弱(ぜいじゃく)性を訴えた人物だ。マスク氏はザトコ氏が連邦機関に提出していた内部告発文書の内容を引用し、ツイッターは買収合意の際にデータセキュリティーに関する問題を隠していたと、法的申し立ての中で主張していた(2022年9月20日記事参照)。

こうした事態を受け、デラウェア州衡平裁判所のマコーミック裁判官は10月6日、翌7日から行う予定だったツイッター対マスク氏の裁判を10月28日東部時間午後5時まで一時中止とする命令を出した。マスク氏は買収のための資金調達にもう少し時間が必要だと主張しており、同裁判官がそれを認めたかたちとなる。ツイッターはマスク氏の要求を拒否すべきと主張していた。期限までに取引が完了しない場合は11月に裁判となる(ロイター10月6日)。

(田中三保子)

(米国)

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