オーストリア経済研の予測、2022年GDPは上方修正も、2023年はスタグフレーションへ

(オーストリア)

ウィーン発

2022年10月19日

オーストリア経済研究所(WIFO)は10月7日、2022年秋季経済予測を発表した。2022年の実質GDP成長率は、上半期の活発な経済活動のため、4.8%と、6月発表の夏季経済予測から0.5ポイント上方修正した。一方、2023年の成長率は0.2%とし、エネルギー価格高騰と高い消費者物価指数上昇率(インフレ率)の影響により、夏季経済予測から1.4ポイント減と大幅に下方修正した(添付資料表参照)。2023年もインフレ率が依然として高止まりすることが予想され、オーストリアは1970年代以降で初めて、景気後退とインフレが同時に進行するスタグフレーションに向かって進んでいるとした。

同国統計局の国民経済計算によると、2022年第1四半期(1~3月)と第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率 は前年同期比でそれぞれ9.3%、6.0%だった(前期比ではそれぞれ1.3%、1.9%)。同局によると、2022年上半期の経済活動は活発で、2022年1月から5月にかけて輸出は18.9%増と拡大し、新型コロナウイルス対策による諸制限の廃止によって個人消費も伸びた。特にレストラン・ホテル業の回復が著しかった。また、夏の観光シーズン前半の5~7月には、観光客の宿泊日数は前年同期比42.8%増の3,704万泊になったが、新型コロナ禍前の2019年の3,883万泊を4.6%下回った。

一方、2022年下半期に向けて、経済指標は大幅に悪化している。2021年秋以降高騰化していたエネルギー価格がロシアのウクライナ侵攻によってさらに上昇し、インフレ率は1月の5.0%から9月には10.5%にまで上がった。WIFOは、世界経済の冷え込みを受けてオーストリア経済も下半期はマイナス成長の可能性になると予測している。

また、ガス供給が維持されることを前提に、2023年下半期以降は回復が予想されるが、2023年のインフレ率予測は6.5%と、依然として高い水準を維持する見通しのため、オーストリア経済はスタグフレーションに陥る恐れがあるとした。輸出は0.9%しか拡大せず、高いインフレのため、個人消費は景気の原動力の役割を失いつつある。政府は多様な支援策により、インフレの家計への悪影響を一程度、緩和させようとしている。

2022年の労働市場は好調で、失業率は前年比1.5ポイント減の4.6%、2023年は4.7%と予測。2023年以降は高齢者や女性を中心に求職者が増え、ウクライナなどからの外国人求職者も増えることが見込まれ、労働力の供給が増加することで、失業率が若干上がる見通しだ。

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア)

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