ムハンマド皇太子、新たな「国家工業戦略」発表

(サウジアラビア)

リヤド発

2022年10月24日

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(首相)は10月18日、新たな「国家工業戦略(National Strategy for Industry)」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同戦略は国家改革「ビジョン2030」の目的に沿うもので、投資を呼び込み、経済多様化の達成に貢献し、国内生産や非石油輸出を発展させる工業経済を構築することを狙いとする。

ムハンマド皇太子は「われわれは、野心的な若い才能や、優れた地理的位置、豊かな天然資源、国内の優れた製造業企業の存在など、競争力があって持続可能な工業経済を可能にするために必要な全ての能力を有している。国家工業戦略を通じ、また民間部門との協力により、サウジアラビアは世界的なサプライチェーンの確保とハイテク製品の輸出に貢献する主要な工業大国になるだろう」との見方を示している。

工業部門は「ビジョン2030」の柱の1つとして当初から位置付けられてきた。政府は、同改革の開始以来、工業施設の数は50%以上増加して2022年には1万640施設に達したとしており、新戦略の下で2035年までに約3万6,000施設に増やすことを目指す。

重点12分野を発表

新戦略では、工業経済を多様化するために、12の工業分野(注)を優先セクターとして位置付けており、総額1兆リヤル(約40兆円、1リヤル=約40円)に相当する800以上の投資機会が確認されている。政府はこれらの投資を通じて、2030年までに国内工業生産高を3倍に、工業輸出額を2倍に増やすなどの経済的リターン達成を目指す。日本企業にとっても新たなビジネス機会となる可能性がある。

また、政府は同戦略を通じて、(1)民間部門の強化と工業部門の柔軟性と競争力の向上、(2)国民の福利と経済活動に重要な商品へのアクセスの継続性の確保、(3)バリューチェーンの地域産業統合と有望な新技術への投資を通じて、優先セクターの商品群のグローバルリーダーシップを取ることを目指す。

これらの国家目標を達成するため、ムハンマド皇太子が自ら指揮する「工業に関する最高会議」が新たに設立された。また、工業分野の投資家が意思決定や開発政策に参加できるように、民間部門の参加による工業評議会も併せて設立された。

(注)機械および設備、輸送機械、航空機、軍事品、船舶、食品、化学品、医薬品、医療機器、持続可能なエネルギー、鉱業、建設資材の12分野

(秋山士郎)

(サウジアラビア)

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