米メタ、中国とロシアの情報操作に関する報告書を公表、米国中間選挙やウクライナ情勢がターゲットに

(米国、中国、チェコ、ロシア、ウクライナ)

米州課

2022年10月06日

フェイスブックやインスタグラムを運営する米国企業のメタは9月27日、「中国およびロシアによる協調的不正行為の排除」と題する報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

リリースによると、中国に拠点を置く小規模なグループが、米国とチェコ、および世界中の中国語とフランス語話者を対象に、ソーシャルメディア(フェイスブック、インスタグラム、ツイッターなど)上で情報操作を試みていたという。ロシアの小規模なグループも同様に、ウクライナ情勢について、欧州諸国向けに偽情報などを流していた。

中国のグループは、2021年秋から2022年9月中旬にかけて、それぞれ異なる時期に、特定の閲覧者に向けた短期的な取り組みを実施していた。具体的には、中国語による主に地政学的な問題に関する米国への批判、英語による共和党支持者と民主党支持者の双方に対する政治的な投稿、チェコ語によるチェコ政府の政策批判、などを行っていた。対米国については、2022年11月に中間選挙を控えた同国の内政を乱す目的があったとみられる。対チェコについては、ウクライナ情勢を巡り同国を支援するチェコ政府や、当該情勢が同国経済に与える影響を批判していた。また、中国に対するチェコの外交政策も批判の対象となっていた。

上述の取り組みを実施するソーシャルメディアの各アカウント群(1群当たり約6つのアカウント)は、対象国の閲覧者が通常起きている時間帯ではなく、中国の勤務時間帯に少しずつコンテンツを投稿していた。投稿の閲覧者は少数で、中には偽情報と指摘する者もいた。メタの自動システムは、なりすましや不正を含む複数のコミュニティー基準違反を理由に、中国のグループが利用していた多数のアカウントとフェイスブックページを削除した。

ロシアのグループは、ドイツ、フランス、イタリア、ウクライナ、英国を主な対象として、ウクライナ情勢に関する取り組みを実施していた。同グループは、2022年5月に開始した取り組みの中で、ドイツ誌「シュピーゲル」、ドイツ紙「ビルド」、英国紙「ガーディアン」など、欧州メディアの正規ウェブサイトになりすましていた。これらのウェブサイトでは、ウクライナやウクライナ難民を批判したり、ロシアを支持したり、欧米の対ロシア制裁を逆効果と主張したりしているオリジナル記事を掲載していた。また、これらの記事やユーチューブ動画は、フェイスブック、インスタグラム、テレグラム、ツイッターなど、多くのソーシャルメディアで宣伝されていた。

メタがこの取り組みのドメインを停止したところ、同グループは新たなウェブサイトを立ち上げようとする執念と継続的な投資を示唆したという。言語は主に、英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、ウクライナ語が使用されていた。また、欧州とアジアに所在するロシア大使館が、フェイスブックページ上で、この取り組みの内容を詳述することが何度かあったとしている。

メタはリリースの中で、米国シンクタンクのアトランティック・カウンシル内のデジタル・フォレンジック研究所などから一部洞察を得たとして、彼らのさらなる研究を促すことを目的に、今回の調査結果を共有したと述べている。

(片岡一生)

(米国、中国、チェコ、ロシア、ウクライナ)

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