欧州議会、EU基本原則の順守でハンガリーに圧力
(ハンガリー、EU)
ブダペスト発
2022年10月04日
欧州議会は9月15日、ハンガリーにおける民主主義の危機に関する決議を可決、採択した(賛成433票、反対123票、棄権28票)。
欧州議会は、2018年に、ハンガリーがEUの基本原則〔欧州連合条約(TEU)第2条、注1〕を順守していない明らかなリスクがあるとして、EU理事会(閣僚理事会)に対し、TEU第7条第1項(注2)に基づいた対応を求める決議を採択していた。今回の決議は、この4年間で同国の状況が未改善で、「ハンガリーにおける『法の支配』は危機的」な状況として、あらためてEU理事会に同国に対するTEU第7条の履行を進めるよう求めた。
ハンガリーに関する懸念事項としてあらためて今回の決議で指摘したのは、次の12の点。
- 憲法と選挙制度の機能
- 司法機関などの独立性と裁判官の権利
- 汚職・利益相反
- プライバシーとデータ保護
- メディア多元主義を含む表現の自由
- 学問の自由
- 宗教の自由
- 結社の自由
- LGBTQI(注3)の権利を含む、平等な扱いを受ける権利
- ロマ、ユダヤ人など少数民族に属する人々の権利と、ヘイトスピーチからの保護
- 移民、亡命希望者、難民の基本的権利
- 経済的・社会的権利
今回の決議採択において、欧州議会のグウェンドリン・デルボス・コーフィールド議員〔フランス選出、欧州緑の党・欧州自由同盟(GREENS/EFA)グループ〕は「ハンガリーでの『法の支配』は憂慮すべきところまで後退している」とした上で、「EU理事会と欧州委員会は目を覚ますべき」と警告した。
同決議は、EU理事会に対し、ハンガリーへの「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」を承認しないことや、そのほかのEU基金からの資金拠出の見直しも求めた。
一方、ハンガリー政府は9月5日、EUからの資金の管理における違法・不正行為の防止、発見、是正を目的とする機関の設置を決定した(同機関は11月21日までに設置予定)。また同日、外部専門家の提案に基づいた、公共調達の効率性と費用対効果を評価する枠組みを、11月30日までに設定することも決定していた。
また、ハンガリーのバルガ・ユディット司法相は9月8日、SNSを通じ、「EU資金の効率的で透明性のある利用が、われわれの共通の利益であることは間違いない。ハンガリー政府はこのことを確信している。われわれは、EUと相互尊重に基づいた対話に努め、国民がEUの資金を利用できるよう取り組んでいる」とEUへの歩み寄りの姿勢を示している。
(注1)TEU第2条では、EU設立の基礎となる価値として、自由、民主主義、平等、法の支配、基本的人権の尊重が掲げられている。
(注2)TEU第7条は、加盟国に対する資格停止について定める。同第1項では、加盟国の3分の1、欧州議会または欧州委による提案に基づき、EU理事会は、欧州議会の同意と加盟国の5分の4の過半数からの支持をもって、当該加盟国が第2条に規定する価値を著しく侵害する明らかなリスクがあると判断することができると規定している。
(注3)LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)に、Q(クエスチョニング、自己の性自認や性認識が定まっていないこと)とI(インターセックス、身体的な性が男性と女性の中間またはどちらにも一致していないこと)を加えた概念。
(バラジ・ラウラ)
(ハンガリー、EU)
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