米国の2022年度財政赤字は1兆3,770億ドル、前年度から半減も当初見通しほど改善せず

(米国)

ニューヨーク発

2022年10月19日

米国議会予算局(CBO)は10月11日、2022会計年度(2021年10月~2022年9月)の財政赤字を1兆3,770億ドルとする推計値を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。2021年度の2兆7,760億ドルから半減となるが、5月時点のCBOの見通しでは1兆360億ドルとなっており、見通しほど大幅な改善とはならない見込みだ。

2022年度の歳入は4兆8,960億ドルで、前年度から8,500億ドル増加と予測した。増加が最も大きいと予測されたのは個人所得税の2兆6,370億ドルで、前年度から5,930億ドル増、次いで雇用主が支払う給与税(1兆4,790億ドル)が前年度から1,650億ドル増だった。そのほか、法人税(4,250億ドル)も前年度から530億ドル増と堅調に増加する見込みとした。

歳出は6兆2,730億ドルで前年度から5,480億ドル減少と予測した。減少に寄与するのは主に新型コロナウイルス対策に関連する項目で、税額控除(前年度から4,860億ドル減)、失業保険(3,590億ドル減)、中小企業対策費(3,000億ドル減)、新型コロナウイルス関連救済費(1,380億ドル減)などだった。前年度から増加する項目は、メディケアやメディケイドなどの社会保障費(2,140億ドル増)、教育関連費(3,780億ドル増)、利払い費(1,210億ドル増)などだった。

歳入は5月の見通し(4兆8,360億ドル)から増加する一方、歳出も5月の見通し(5兆8,720億ドル)よりも多額になると予測した。バイデン政権が8月に発表した1人当たり最大1万ドルの学生ローン債務を減免する措置(2022年8月25日記事参照)によって新規に発生した関連経費の増加が響くとみられている。また、連邦準備制度理事会(FRB)による急激な金融引き締めなどの影響により、利払い費が5月の見通し(3,990億ドル)から5,340億ドルへと大きく上振れすることも響いた。

2022年度の財政赤字は大幅に改善する見込みだが、中長期的に見れば、その水準はいまだ高水準にある。新型コロナウイルス関連対策による歳出増は今後さらに落ちつくと考えられるが、前述の学生ローン減免の影響や利払い費の歳出増のさらなる影響が懸念される。また、世界的に景気停滞局面を迎えていることから、企業収益悪化から派生する歳入の減少も2023年度以降は懸念される。財政収支の悪化は国債の利回りなどの金利水準に大きく影響を与えるため、2023年度以降も米国の財政改善傾向が続くかどうか注目される。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 19681371f0e55fb0