カナダ政府、航空部門の脱炭素アクションプランを発表、2030年に持続可能な航空燃料使用率を10%へ

(カナダ)

米州課

2022年09月30日

カナダのオマール・アルガブラ運輸相は9月27日、カナダの航空部門における2050年までの温室効果ガス(GHG)排出量ネットゼロ・ビジョンを達成するための行動計画を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

行動計画は「カナダの航空部門における気候問題へのアクションプラン(2022~2030)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」と題し、現在1%未満(注1)にとどまっている全航空燃料中における持続可能な航空燃料(SAF、注2)の使用率を2030年までに10%に高めるという野心的な目標を設定している。「2050年までにGHG排出量ネットゼロ」のビジョン達成のためには、大量のSAFが必要であることが明示されており、カナダ政府と航空業界の主要な行動指針が含まれていることが特徴だ。

行動計画によると、米国や欧州でSAFの精製に積極的に取り組む業者がいくつか存在するのに対し、カナダでは本格な生産が行われていない。特にネックとなっているのがコストの高さで、SAFは従来のジェット燃料からは2~5倍ほど高く、また再生可能ディーゼル燃料よりも高い。今後、SAFのカナダ国内での生産や使用の促進には、政府の政策・規制環境の改善が重要だとしている。また、最近の関連の取り組みとして、60を超える航空会社から成るカナダ持続可能航空燃料評議会(C-SAF)が2022年に創設されたことを挙げ、同評議会がカナダ国産のSAF製造促進のために主要なステークホルダーや政府をまとめ、今秋にロードマップを完成させる見通しであることに触れた。

他方、SAFによるGHG排出量削減効果に期待しつつも、業界内部のみでのネットゼロ達成は難しいとの見方で、業界外とのカーボンクレジット取引などと併せて目標を達成してゆく必要があるとしている。

なお、今回定められた内容は、2024年、2027年および2030年に、気候変動に関する将来予測の見直し、短期コミットメントの強化、暫定目標の設定やカナダ政府のコミットメントとの整合性確保の観点から、見直すことがあらかじめ想定されている。

アルガブラ運輸相は、GHG排出量ネットゼロ達成に向けては輸送、経済、気候の各分野は手を取り合い進んで行くべきだとして、同計画について「ビジョンを設定し、正しい道を歩むために必要な行動を計画していく上で、われわれがどのように協力できるかを示す良い例だ」と述べ、計画の実施や追加措置の模索において、主要な利害関係者や一般市民と協力していくとしている。

カナダ政府と航空業界は2012年に、航空業界におけるGHG排出削減のためのカナダ初の行動計画を発表し、以来10年にわたり共に業界の炭素強度の削減に努めてきた。2021年に英国グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、国際航空気候野心連合の宣言文書(International Aviation Climate Ambition Coalition) に署名した。同宣言には、航空排出量を削減するための具体的な取り組みを詳述した行動計画を作成し、その計画を第41回国際民間航空機関(ICAO)総会(2022年9月27日~10月7日開催)に先立って同機関に提出することが定められており、今回発表された計画が提出されたものとみられる。

(注1)2022年現在、カナダで使用される全航空燃料中でSAFが占める割合はわずか1%未満にとどまっているとみられる(「トロント・スター」9月27日)。

(注2)Sustainable Aviation Fuelの略称。廃棄材や食用油などを原料とする燃料で、従来の航空燃料と比べて80%程度の二酸化炭素(CO2)排出量を削減できるとされるが、価格差は2021年時点で最大10倍程度あるとされる。

(高山さわ)

(カナダ)

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