素材大手ユミコア、VW傘下企業とEV電池材料生産のJV設立

(ベルギー、ドイツ)

ブリュッセル発

2022年09月30日

ベルギーの素材大手ユミコアは9月26日、ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)グループ傘下でバッテリー事業を担うパワーコー(PowerCo)と共同で、電気自動車(EV)用の電池材料を生産する合弁会社(JV)を設立すると発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。新会社の本社はブリュッセルとし、損益などは均等分配する。両社はJVを通じて30億ユーロを生産設備に投資、2025年に正極材とその材料となる前駆体の生産を開始し、ドイツ北部ニーダーザクセン州にあるパワーコーのザルツギッター工場(2022年7月22日記事参照)へ供給する見込みだ。生産能力は2026年に年間40ギガワット時(GWh)とし、さらに市場と需要の動向を見ながら、2029年末までにEV220万台分の電池に相当する160GWhまで拡大することを目指す。なお、生産拠点は調査中としている。

今回の長期的なパートナーシップには、ユミコアが強みを有する持続可能で責任ある原材料の調達についての協力も含まれ、持続可能なバッテリーの大規模サプライチェーンの構築を目指している。ユミコアは素材から不純物を取り除く精錬サービスをパワーコーに提供する。将来的には、ユミコアの技術に基づく精錬事業やバッテリーのリサイクルをJVの事業範囲に含めることも目指す。

ユミコアは発表の中で、正極材はバッテリーの性能を左右する重要な技術であると同時に、バッテリーの総コストに最も影響を与えることから、電動化への移行を成功させるために極めて重要なものとし、今回のJV設立の意義を強調している。

発表によると、今回のパートナーシップによってユミコアは、テイク・オア・ペイ(注)契約により利益が保証されたかたちで、欧州でのEV用バッテリーの正極材需要を取り込むことができる。また、パワーコーにとっては、ユミコアが持つ生産能力やノウハウを活用することで、高性能かつ持続可能な電池材料を大量かつ安定的に、競争力のある価格で調達できるというメリットが期待される。

(注)売買契約で、買い手が契約量の一部を引き取らない場合でも、契約量の全量相当の代金を支払うこと。

(大中登紀子)

(ベルギー、ドイツ)

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