ジョンソン首相、原子力発電計画への資金提供を表明

(英国)

ロンドン発

2022年09月05日

英国のボリス・ジョンソン首相は91日、英東部サフォーク州サイズウェルでフランス電力(EDF)が計画する原子力発電所サイズウェルCに対して、約7億ポンド(約1,127億円、1ポンド=約161円)を提供すると発表した。同地を訪問した際の演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで述べた。

ジョンソン首相は演説で、フランスでは1995年以降4基の原子力発電所が建設され、約56基の原子炉で70%の電力を賄っていることを引き合いに、英国はその間に新しい原子力発電所を建設できておらず、電力の15%しか原子力で賄えていないと指摘。エネルギー価格を押し上げることとなったロシアによるウクライナ侵攻は、英国における新しい原子力発電能力の必要性を示したと述べた。

英国政府は720日にサイズウェルC原子力発電所の建設計画の承認を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同発電所は容量3.2ギガワット(GW)で、600万世帯相当に電力を供給する予定。また、ガス火力発電所と比べ、年間約900万トンの二酸化炭素排出量を削減できるとしている。同地にあるサイズウェルB原子力発電所は現在稼働中で、サイズウェルA原子力発電所は既に運転期間を終え、廃炉作業中となっている。

今回の資金は、英国政府が202110月に策定した大規模原子力発電プロジェクト向けの17億ポンドの資金枠から拠出される。

次世代原子力技術プロジェクトも支援

英国政府は9月2日、次世代原子力技術プロジェクトに対し、合計330万ポンドの資金提供を実施することも発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。先進モジュール炉(AMR)の開発に関する6つのプロジェクトに対して資金が提供される。この中には、英国立原子力研究所(NNL)と日本原子力研究開発機構(JAEA)による高圧ガス炉(HTGR)開発も含まれる。

また、英原子力規制庁と環境庁に対して83万ポンドを提供し、HTGRに対する革新的な規制アプローチを検討することとしている。

英国政府は20224月に発表した「エネルギー安全保障戦略」で、原子力発電については2030年までに最大8基の原子炉を新設し、2050年までに最大24GWの出力を整備、電力需要の最大約25%を賄うことを目指し、先進的な原子力技術開発も加速させるとしている(2022年4月13日記事参照)。

(菅野真)

(英国)

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