インド、IPEFの貿易分野の交渉参加は見送り

(インド)

ニューデリー発

2022年09月15日

インドのピユシュ・ゴヤル商工相は989日に米国ロサンゼルスで開催されたインド太平洋経済枠組み(IPEF)の閣僚級会合に出席した。ゴヤル商工相はIPEFの協議対象となる4つの柱のうち、「サプライチェーン」「クリーン経済」「公正な経済」の3分野の交渉に参加することを表明。その一方で、「貿易」の柱では、環境や労働、デジタル貿易、公共調達といった協議内容について、インドがどう裨益(ひえき)し得るかを見極める必要があるとして、交渉参加を見送った。インドはIPEFに加盟する14カ国のうち、交渉の一部に参加しない唯一の国となった。

インド国内の主要紙は、インドがIPEFの貿易分野への交渉参加を今回見送った点に関し、有識者による視点を報じている。「ビジネスライン」紙(911日)は、貿易分野の協議内容がインドに合わなかったとするジャワハルラル・ネルー大学のビスワジット・ダール教授の見解を紹介した。同教授は、インドがWTOのデジタル貿易分野の協議からも距離を置いている点に触れた上で、インド以外のIPEF加盟国は労働や環境に対する規制を国内産業保護の手段としている側面もあると指摘。今回の判断はインド政府の立場から見ると論理的だとした。

他方、「エコノミック・タイムズ」紙(912日)は、インド政府の判断に批判的な有識者の見解を報じている。非営利団体CUTSの事務局長で貿易政策に詳しいプラディープ・メフタ氏は同紙への寄稿で、インドが先進国入りを目指すのであれば、政府は輸出促進による経済成長の道を探るべきだと主張。地域連携協定に比べると柔軟な枠組みであるIPEFで、貿易分野の交渉にすら参加しようとしない政府の姿勢に懐疑的な見方を示した。

「ビジネス・スタンダード」紙(913日)は社説で、現時点でインド政府が労働や環境などの課題について、他国と協議する準備が整っていない点は理解できるとしつつ、中長期的な観点からは、インドがグローバルサプライチェーンの一端を担おうとするのであれば、これらの課題を避け続けることはできないとも指摘した。

(広木拓)

(インド)

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