議会が新テレワーク法可決、違反制裁課税は最高900万円弱相当に達する可能性も

(ペルー)

リマ発

2022年09月20日

ペルー議会は9月2日、テレワークにおける労働条件や各種規定を定めた法律第31572号(テレワーク法)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを、賛成97票、反対3票、棄権3票の賛成多数で可決した。同法は9月7日に公布された。

ペルーでは2013年にテレワークの規制に関する法律第30036号が公布済みだったが、当時は新たな労働形態としてその採用を推進する意味合いが大きかった。一方、今回の法律は、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言でテレワークを強いられる労働者が増えたため、雇用主に労働者のワークライフバランスを考慮させることが主な目的となっている。

今回の新たなテレワーク法制定に伴う最も重要な変更点は、雇用主側(公共セクターの場合は国や自治体)にテレワークに必要なパソコンなどの機材や電気代、インターネット環境を整えるための経費負担義務を課すという点(ただし小規模零細企業は対象外)だ。また、勤務時間外における「連続12時間のデジタル切断」の厳守も定められている。これらの監督は、公務員の場合は公務員監督庁(SERVIR)、民間企業の場合はペルー労働監督庁(SUNAFIL)が行うとされており、違反の場合はそれぞれの関連法(注1)にのっとり制裁を受ける。民間企業の場合は、最高で52.53 UIT(約894万円、注2)の制裁課税を受ける可能性がある(添付資料表参照)。

2021年12月から審議が継続されてきた同法案は当初、右派アバンサ・パイス(国よ進め)党から提出されたが、その後、左派ペルー・リブレ(ペルー自由:PL)党による修正(注3)が加えられた。その後、議会の労働社会保障委員会と科学イノベーション技術委員会での審議を経て、最終案が完成した。これに対して政権側は、「公共セクターにおける経費負担増」や「テレワークの監督において労働雇用促進省(MTPE)とSUNAFIL間での混乱が生じる可能性がある」など14項目について指摘。しかし最終的に、議会側が議会規則第79条(注4)を行使して、同法の公布に至ったため、採択に時間を要していた。

政権側は、今後90日以内に本法律の詳細規則を制定することが求められている。その後、雇用主は60日以内に同規則にのっとって労働条件を整える必要があるため、実際に法律が発効するのは2023年2月以降の見通しだ。

(注1)公務員の場合は法律第30057号(公務員規定法)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)による訓戒・減給・懲戒などの処分、民間企業の場合は法律第28806号(労働検査と規定に関する総合法)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)第48条UIT計算式による制裁課税を受けることになる。

(注2)課税単位。2022年9月は1UIT=4,600ソル(約17万200円、1ソル=約37円)。

(注3)PL党は主に、雇用主側がテレワークに必要な機材とインターネットの費用を負担することを求めた。

(注4)議会規則第79条は、政権側からの指摘があった場合でも、議員定数(130人)の半数以上の賛成を得られれば法案を可決できるとしている。

(設楽隆裕)

(ペルー)

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