英政府、シェールガス採掘の一時停止を正式に解除

(英国)

ロンドン発

2022年09月27日

英国政府は922日、国内におけるシェールガス採掘の一時停止を正式に解除外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますすることを発表した。本件は、8日に発表されたエネルギー供給安定化に向けた対策の1つとして、方針が示されていたもの(2022年9月9日記事添付資料参照)。英国では、作業に関連する地震の可能性を正確に予測できないとして、201911月以降フラッキング(注)が一時停止外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされていた。シェールガスの開発事業者はフラッキング開始にあたり、開発ライセンス、当局の認可、同意が必要となる。なお、同じく8日に示された方針の1つである新たな石油・天然ガス開発ライセンスラウンドの開催についても併せて発表され、10月上旬に行われる予定とされた。

政府は、シェールガスを含む国内産石油およびガスを最大限活用することで、エネルギーの輸入依存度が低くなり、エネルギー安全保障の確保につながるとした。英国は再生可能エネルギー、原子力、低炭素エネルギー源の拡大に取り組んでいるものの、移行期においては今後数年間、石油およびガスの需要の継続が予想されるとしている。

今回の発表は、英国地質調査所による科学的レビューの公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとともに行われた。レビューでは、英国の地質およびシェールガス資源に関する現在の理解が限定的であることが指摘された。また、現在までに英国でフラッキングにより採掘された試験井は3カ所のみとされている。こうした状況を踏まえ、政府は今回の決定によりさらなるデータが蓄積され、シェールガス資源およびその安全な採掘方法に関する理解を深めることができるとした。

一方、安全性や生産量の観点から、英国でのシェールガス開発に対する否定的な意見が残る。英国調査会社ユーガブによる英国民を対象とした2022年9月の調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、国内でのシェールガス開発に賛成する割合が28%であるのに対し、反対が47%となった。また、報道では、「たとえ新しいライセンスが与えられたとしても、商業的にガスを生産できるようになるには何年もかかる」とする有識者の指摘を紹介している。

(注)化学物質を含む高圧水を使用した、シェールガス・オイルの採掘方法。環境汚染や地盤への影響を懸念する見方がある。

(菅野真)

(英国)

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