政府がクイックコマースのダークストア規制に着手

(フランス)

パリ発

2022年09月14日

フランスのオリビア・グレゴワール中小企業・商業・手工業・観光担当相とオリビエ・クラン都市・住宅担当相は9月6日、地方議員の代表などと協議の末、クイックコマースの「ダークストア」を「倉庫」に分類し、「ダークキッチン」には新たな業種カテゴリーを設けることで合意した(9月6日付発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。クラン都市・住宅担当相はアレテ(省令)を定め、市長が都市計画の対象として「ダークストア」の開業などを規制可能な法的手段を与える予定。一方、クイックコマースが引き起こす、騒音などの問題は、市長が既存の警察権限で取り締まることができるとした。

ダークストアとは、商品を陳列するものの消費者へ直接販売は行わず、Eコマースの配送拠点としても機能する流通拠点。商店か倉庫かの法的定義をめぐり、自らをスーパーマーケットと定義する「ダークストア」(「ウエスト・フランス」紙8月14日)と地方自治体との間で問題となっていた。政府は今回、注文客による受取場所を兼ねる場合を含めて、ダークストアは倉庫と判断した。地方自治体が土地利用計画を定める地域都市計画プラン(PLU)で、倉庫が認められていない区域でのダークストアの営業は、アレテ施行以降は禁止となる。

新型コロナウイルス関連の外出制限により、パリやリヨンなどの大都市を中心に、15分以内をめどに日用品や食品を宅配するダークストアや、客席がない宅配・テークアウト専門のレストラン「ダークキッチン」など新たな商業形態が台頭。空き店舗や空き事務所を改造し増大していったダークストアは、スクーターの配達による騒音問題や、実店舗に対する不正競争防止の観点から批判の対象となっていた。

パリ市は先立って規制に着手済み

パリの都市計画を考察するNGOであるパリ都市計画アトリエ(APUR)の2022年2月の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、1月時点で「パリには60のダークストアがあり、うち14が商業・手工業のみしか認められていない保護区域内にある」とした。パリ市の地域都市計画プランは、住居用建物の1階および地下への倉庫の設置を禁止している。同市は3月、ダークストアを倉庫とし、未認可のダークストアへの改造工事を見つけた場合、市民が通報できるシステムを構築していた(パリ市の3月24日付発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

アンヌ・イダルゴ・パリ市長は9月6日、今回の政府の発表に対し「地元の店を保護し、パリ市民の生活の質を維持する朗報」と喜びの意を表した。

(奥山直子)

(フランス)

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