オーストリア政府、電力価格高騰対策を発表

(オーストリア)

ウィーン発

2022年09月14日

オーストリアでの電力価格は、2021年から急騰している。エネルギー市場規制機関e-controlによると、2022年第3四半期(7~9月)の電力市場価格は前年同期比3.9倍の1メガワット時当たり307.29ユーロに上昇した。ウィーン・エネルギーをはじめとするエネルギー供給企業は9月から消費者向けの電気料金を大幅に引き上げることを発表。エネルギー価格の高騰も受け、消費者物価上昇率も8月に前年同月比9.1%上昇した。政府に対し、エネルギー価格の上昇に歯止めをかけるよう圧力が高まっていた。

これを受けて政府は、電力会社とオーストリア経済研究所(WIFO)の専門家と協議した上で、9月7日の閣僚会議で電力価格高騰への対策を承認・発表した。具体的には、1世帯当たりの電力の平均使用量の80%とされる2,900キロワット時(kWh)まで、1kWh当たり10セントを超える分の電力価格を国が負担する。電力会社が意図的に値上げすることを防ぐために、上限は1kWh当たり40セントとする(国が1kWh当たり最大30セントを補助する)(添付資料図参照)。

2,900kWhを超えた分は市場価格を支払わなければならないが、3人以上の世帯は支援額の増額を申請できる。これによって、平均的な世帯の電気料金は年間500ユーロ程度下がると予想されている。また、低所得世帯(国営放送料金が免除される人)のために、配電料金の75%をカバーする支援金もあり、これにより料金がさらに最大200ユーロ減額される。支援策は2022年12月~2024年6月末まで実施される。気候行動・環境省によると、政府は支援策のため、30億~40億ユーロを拠出する。

レオノーレ・ゲベッスラー気候行動・環境相は政策発表の記者会見で、「電気料金の急騰は多くの家庭にとって大きな負担になる。政府は、負担を迅速かつ簡単、および確実に軽減できる措置を講じようとした。今回の政策は、電力の基礎需要を助成することに加え、電力を節約するインセンティブでもある」と述べた。

また、各州政府も、主に低所得者のために独自のエネルギー価格高騰対策を実施している(添付資料表参照)。

野党の社会民主党は、政府の電力価格高騰への対策を基本的に歓迎するが、実現するのが遅いと批判している。また、労働会議所のレナーテ・アンデルル総裁と労働組合は、対策費用の確保のため、エネルギー企業に対して、エネルギー価格の高騰による過剰利益への課税を行うべきだと指摘する。一方、一部の経済学者からは、支援金の額には世帯規模や受益者の収入額が反映されていないことや、エネルギー価格の支援金導入により環境保護が阻害されるなど、批判の声が上がっている(「デア・スタンダード」紙9月7日、9月9日)。

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア)

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