スイス国立銀行、政策金利を0.75ポイント引き上げプラス0.5%に
(スイス)
ジュネーブ発
2022年09月27日
スイス国立銀行(SNB)は9月22日、金融政策をさらに引き締め、政策金利を0.75ポイント引き上げてプラス0.5%としたと発表。SNBは、世界最低水準だった政策金利を6月に見直し、マイナス0.75%からマイナス0.25%としていた。今回の決定により、インフレ圧力の再燃と、これまで影響の少なかったモノやサービスの値上がりに対抗する。中期的な物価安定のため、政策金利のさらなる引き上げも排除しない。SNBは、適切な金融環境を提供するため、 必要に応じて外国為替市場にも積極的に関与していくとしている。
今回の政策金利の変更は、9月23日から適用。これにより、SNBの金融政策はマイナス金利から脱却する。スイス・フラン建ての短期金融市場の金利は、政策金利に近い水準で維持される。また、SNBにある各銀行のサイト・デポジット(要求払い預金)は、一定水準まではSNBの新たな政策金利で償還される。この閾値(しきいち)を超えるサイト・デポジットは、ゼロ・パーセントの金利で償還される。SNBは、今後、流動性リスクを管理していくとしている。
スイスのインフレ率は8月に3.5%に上昇し、当面は高い水準が続くとみられる。今回のインフレ率の上昇は、主にモノ、特にエネルギーと食品の価格上昇に起因している。SNBが今回発表した条件付きインフレ予測は、SNBの政策金利が当面0.5%との前提に基づくもの。2024年半ばまでのインフレ予測は、政策金利がマイナス0.25%だった2022年6月時点の予想を上回るとしている。その後は、今回の金融政策の引き締めにより低下するとみている。新たな予測では、年平均インフレ率を 2022年3.0%、2023年2.4%、2024年1.7%とし、今回のSNB政策金利の引き上げがなければ、インフレ率予測は大幅に上昇したとみている。
SNBは2022年の実質GDP成長率予測について、スイス連邦経済省経済事務局(SECO)が9月20日に発表した予測(2022年9月27日記事参照)と同じ、2%程度とした。前回6月の金融政策決定会合から約0. 5ポイント下方修正となった。SNBは、不確実性は依然として高く、最大のリスクは世界的な景気後退、欧州のガス不足の深刻化、スイスの電力不足で、さらに新型コロナウイルス感染症の再拡大も否定できないと述べている。
(竹上嗣郎)
(スイス)
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