ガブリリツァ首相、モルドバのビジネス環境改善に意欲

(モルドバ)

ブカレスト発

2022年09月22日

モルドバの首都キシナウで9月15日から16日にかけて、第8回モルドバ・ビジネス・ウィークが開催された。冒頭でナタリア・ガブリリツァ首相が演説を行い、「ロシアのウクライナ侵攻によってエネルギー、食糧、人道的安全保障の不確実性が迫っている。これに適応し、予測可能性が求められるこの時期にフォーラムを開催することは意義深い。ウクライナの難民や企業のサプライチェーン、事業移転をモルドバが支援してきたように、今後も平和と安定、国と市民、ビジネス環境整備に貢献したい」と述べた。また、6月23日に取得したEU加盟候補国の地位(2022年6月28日記事参照)はモルドバ発展の原動力で、行政手続きのデジタル化などを通じてビジネスのしやすさを高め、起業のコストを削減していくとした。

写真 フォーラムで演説するナタリア・ガブリリツァ首相(ジェトロ撮影)

フォーラムで演説するナタリア・ガブリリツァ首相(ジェトロ撮影)

モルドバ投資庁のイゴール・ステファネット投資誘致・保護部長は投資環境説明の中で、直近3年間の対内直接投資純流入額9億523万ドル、直接投資累計額のうち83.4%がEU加盟国からで、CIS諸国からは3.65%にすぎないと述べた。また、IT企業誘致策の一環として2018年に設立した、モルドバ・イノベーション・テクノロジー・パークを紹介。パークの入居企業に対する税率を売上高の7%とする単一税の導入(注)により、企業の負担が大幅に軽減されていることや、外国IT人材に対する在留手続き支援について説明した。モルドバ・イノベーション・テクノロジー・パークは、実際の建物はなくバーチャル上のものであるため、企業の所在地がモルドバ国内のどこであっても入居者になることができる。

インフラ・地域発展省のリリア・ダビジャ事務総長は、国内道路の新設・拡張・修復計画の総延長が800キロ以上にのぼり、実施のため世界銀行、欧州投資銀行(EIB)、欧州復興開発銀行(EBRD)、米国政府の援助機関ミレニアム・チャレンジ・コーポレーションの融資や無償資金協力によって6億3,000万ユーロが投じられると述べた。このうち、2021年末までに450キロが完成しているという。

なお、大手日本企業では、自動車用ワイヤーハーネス製造の住友電工やフジクラ、アニメーションとゲーム配信を行うソニー子会社のクランチロールがモルドバに進出している。

(注)通常、モルドバでは法人・個人所得税率が12%、公的医療保険が9%、社会保険料が24%。

(西澤成世)

(モルドバ)

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