広東省珠海市、2035年までの水素エネルギー産業発展規画を発表

(中国)

広州発

2022年08月10日

中国の広東省珠海市発展改革局は727日、「水素エネルギー産業発展規画(20222035年)」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(珠発改能源〔202241号)とその実施方案を発表した。カーボンピークアウトとカーボンニュートラルの実現に向け、水素エネルギー産業チェーンの技術開発・導入を積極的に実施し、広東・香港・マカオグレーターベイエリアを水素エネルギー産業に関して他都市の参考となるような「新たな高地(影響力のある場所)」とするとした。

同規画では、3段階の発展目標を設定した。主な内容は以下のとおり。

  • 2025年までに、水素エネルギー産業チェーンの初歩的な形成を目指し、水素の年間供給能力を3万トン以上とする。水素ステーションを15カ所以上、主導的役割を果たす水素エネルギー産業園区を1カ所建設する。燃料電池自動車の累計普及台数を520台以上、燃料電池の分散型電源、コージェネレーション(熱電併給)設備(注)、予備電源などを50セット以上とする。水素エネルギー関連企業1015社を誘致または育成し、水素エネルギー産業の総生産額100億元(約2,000億円、1元=約20円)を達成する。
  • 2030年までに、水素エネルギー産業チェーンを徐々に完備し、産業配置を最適化。広州市、深セン市、仏山市、東莞市、香港、マカオなどの周辺都市との間で産業チェーンを相互補完して融合を進め、水素エネルギー産業発展共同体を形成する。
  • 2035年までに、水素エネルギー産業によって交通、電力、工業、建築などの多くの分野をカバーし、第5世代移動通信システム(5G)、ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)などの次世代技術と深く融合した「水素エネルギー+知能」産業エコシステムの構築を実現する。

また、目標達成に向けた主な取り組み内容は以下のとおり。

  • 水素ステーションの建設・運営に関する管理方法や補助金制度、水素エネルギーの応用に関する安全管理などの制度、政策を整備する。
  • 洋上風力、太陽光、バイオガスなどの再生可能エネルギー由来の水素製造プロジェクトを着実に推進し、クリーンで多元的な水素製造システムを構築する。
  • 安全かつ効率的な水素貯蔵・輸送ネットワークを構築。圧縮水素、液体水素、個体水素などの貯蔵・輸送に関するパイロットプロジェクトなどを実施する。
  • バス、物流用・建設用車両などについて燃料電池自動車に変換し、通信基地局、データセンターなどで燃料電池技術の応用・普及を進める。
  • 自動車メーカー、燃料電池メーカーなどの企業間の協力を促進して、燃料電池自動車、燃料電池ドローン、分散型発電システムなどを研究開発・生産を進める。

仏山環境・エネルギー研究院の王子縁副院長は水素エネルギー産業の発展に取り組む上での珠海市の優位性として、(1)水素エネルギーの供給保障能力の高さ、(2)関連産業の基礎の存在、(3)応用シーンの広さの3点を挙げた(「珠海区特区報」728日付)。

(注)コージェネレーション(熱電併給)は、天然ガス、石油、LPガスなどを燃料として、エンジン、タービン、燃料電池などの方式によって発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収するシステム。回収した廃熱は蒸気や温水として、工場の熱源や冷暖房・給湯などに利用する。

(梁梓園)

(中国)

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