EECへの直接投資、2022年上半期は日本がトップ
(タイ)
アジア大洋州課
2022年08月16日
タイの東部経済回廊(EEC)事務局は、内資外資を含めた、2022年上半期におけるEEC域内への直接投資額を公表した(注1)。投資申請額は1,048億5,600万バーツ(約3,879億6,720万円、1バーツ=約3.7円)で、前年同期比17%減。これは、同期間のタイへの投資申請額全体の48%を占める。関連して、タイ投資委員会(BOI)のウェブサイト
によれば、同期間中の外資によるEEC域内への投資申請額は670億200万バーツだ。そのため、EECへの投資申請の過半数は外資によるものといえる。
また、EEC事務局によれば、同期間中、実際に承認されたEEC域内での投資事業の総額(内資外資)は、1,055億3,500万バーツだ。産業別でみると、石油化学が338億3,000万バーツと最も多く、電気電子が191億7,200万バーツ、医療が170億4,800万バーツと続く。また、タイ政府が投資誘致を強化する「新Sカーブ産業(注2)」への投資が、EEC全体への投資の49%を占める。自動化・ロボット、またデジタルなどの分野で、多くの事業が承認された。国別でみると、上位3カ国は、日本が145億8,800万バーツと最も多く、次がフランス(135億5,400万バーツ)、オランダ(23億5,800万バーツ)と続く。
なお、承認された事業の詳細は公表されていないが、BOIによれば、同期間中にEEC域内で認可された日系企業の投資案件には、自動車やオートバイの部品製造、ハードディスクドライブ(HDD)製造、プリント回路基板組み立て(PCBA)のほか、太陽光発電、国際貿易センター(IBC)や国際調達事務所(IPO)が含まれる(注3)。
他方、商務省の公表によると、2022年6月末時点における、EEC域内で登記されている企業総数(累積)は7万9,778社、累積投資総額は1兆5,440億9,590万バーツだった。同様に、6月末時点でのEEC域内における外国資本による累積投資額は、8,416億2,279万バーツ(投資全体の54.5%)だ。国・地域別でみると、日本がトップで3,881億1,169万バーツ(外資全体の46.1%)だ。そして、中国が2位で1,074億2,025万バーツ(12.8%)、シンガポールが3位で467億7,674万バーツ(5.6%)と続く。累積投資額においても、外資が投資全体の過半数を占め、かつ日本はトップを維持している。ただし、2位の中国が外資全体に占める割合は近年、上昇傾向にある。
(注1)EEC事務局やタイ投資委員会(BOI)が公表する投資データは、各企業の「申請」額や、タイ政府が「認可」または「承認」した金額(段階ごとに金額が異なる)。他方、後段の商務省による投資総額(累積)は、企業登記上の出資額。また累積には、2022年6月末時点で登記されており、かつ商務省が稼働中と見なした企業のみをカウント。
(注2)タイ政府による用語で、ある産業が幼稚産業の段階から発展期を迎えてその後徐々に成熟してゆく様をアルファベットのS字になぞらえ、タイにおける新たな育成の対象となる産業を「新Sカーブ産業」としている。対象業種は医療、バイオテクノロジー、デジタル、航空、自動化・ロボットの5分野。
(注3)IBCは、関連会社の管理などの統括機能を有するほか、三国間貿易やタイでの卸売りを行う。また、IPOは、原材料・部品の輸入・輸出のほか、タイでの卸売りを行う。
(田口裕介)
(タイ)
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