米FDA、第一三共と英アストラゼネカが共同開発した治療薬のHER2低発現乳がんへの使用を承認

(米国、日本、英国)

米州課

2022年08月12日

米国食品医薬品局(FDA)は85日、第一三共と英国アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ)が共同開発した乳がん治療薬「エンハーツ」(一般名:トラスツズマブ・デルクステカン)について、HER2(注1低発現の乳がんへの使用を承認したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

乳がんは世界におけるがんによる死亡の主な原因の1つで、第一三共によると、2020年には全世界で200万人以上の新規患者が報告され、約69万人が亡くなっているという。全ての乳がん患者のうち、約半数において、HER2が低いレベルで発現(HER低発現)していることが知られているものの、HER2低発現の乳がんを対象に承認されている抗HER2療法はこれまで存在せず、「エンハーツ」が初めて使用が承認された薬剤となった。今回の承認により、第一三共は、アストラゼネカから開発マイルストンとして2億ドルを受領したと発表している。

今回の承認に関し、FDAの腫瘍学研究拠点(Oncology Center of Excellence)のディレクター兼医薬品評価研究センターの腫瘍疾患部門のディレクター代行であるリチャード・パズドゥル氏は「本日の承認は、科学的進歩の最前線に立ち、より多くの患者が分子標的治療薬のオプションを利用できるようにするというFDAの取り組みを強調するもの」とした上で、「患者それぞれのがんのサブタイプ(注2)に合わせて特別に調整された治療法を持つことは、安全で革新的な治療法へのアクセスを確保するための優先事項だ」として、今回の承認の意義を強調した。

ジョー・バイデン大統領は2022年2、オバマ政権で副大統領を務めていた2016年に立ち上げた「がんムーンショット計画の再始動を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしており、その中で、今後25年間でがんによる死亡率を少なくとも50%削減するという目標を掲げている。FDAは「『エンハーツ』の承認は、FDAの取り組みが必要な患者に適当な治療を提供し、最も致命的で希少ながんに対する進歩を加速し、全ての患者の経験から学ぶという『がんムーンショット』の目標にいかに合致しているかをさらに示している」としている。

(注1HER2は乳がん、胃がん、肺がんや大腸がんなど多くのがん細胞表面に発現するタンパク質。乳がん患者の約5人に1人がHER2陽性といわれている。

(注2)乳がん細胞が持つ遺伝子の特徴によって、乳がんを分類したもの。

(滝本慎一郎)

(米国、日本、英国)

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