電力不足で四川省のほぼ全域で生産停止、電力逼迫の背景に雨不足

(中国)

成都発

2022年08月23日

中国・四川省政府は814日、著しい電力不足のため、翌15日から20日までの間、省内のほぼ全域の工場での生産停止を要請する通達を出した。20日にはこの措置を25日まで延長した。通達を受け、日系企業を含む省内のほぼ全ての工場は生産を停止するか、自家発電での低稼働を余儀なくされている(822日時点)。

四川省政府からの要請は、家庭用と市民生活に影響を及ぼす商業分野への電力供給を優先するため、当初は工業分野の企業に電力の使用停止を求めるものだった。それが18日には商業施設にも対象が拡大した。成都市内の大型ショッピングモールや百貨店などでは、同日から照明の停止やエレベーターの運行削減、冷房の電力負荷軽減や停止、一部フロアの閉鎖などにより、使用電力を通常時の約70%以上削減するよう求められ対応している。通達に反して節電を実施しなかった商業施設は強制的に電力供給を停止された。

写真 照明も大型スクリーンも消灯している商業施設のエントランスホール(ジェトロ撮影)

照明も大型スクリーンも消灯している商業施設のエントランスホール(ジェトロ撮影)

写真 店内照明を消灯して営業する大手百貨店内のすしチェーン店(ジェトロ撮影)

店内照明を消灯して営業する大手百貨店内のすしチェーン店(ジェトロ撮影)

成都市内では節電要請を受けて例えば、完全に冷房を停止して店内に大きな氷塊と扇風機を持ち込んで営業するなど、工夫を凝らして営業を続ける飲食店などもあった。19日に照明やネオン、LEDパネルなどを用いた屋外広告や看板、ライトアップの点灯を原則全て禁止する通達が出ると、繁華街では街頭が薄闇状態のなかで、店舗を営業する事態となった。

写真 店舗内に氷塊と扇風機を持込み、冷房を停止して営業する成都市内のバー(当該店舗提供)

店舗内に氷塊と扇風機を持込み、冷房を停止して営業する成都市内のバー(当該店舗提供)

写真 看板を消灯して営業を続ける成都市内のセブン-イレブン店舗(ジェトロ撮影)

看板を消灯して営業を続ける成都市内のセブン-イレブン店舗(ジェトロ撮影)

四川省はもともと、省内電力供給用発電源の約85%を水力発電に依存しており、石炭や石油による火力発電施設も比較的少ない。降雨量が十分でダム貯水量が確保されていれば、電力需給逼迫時に放水し、それに伴う発電施設の稼働率向上で対応可能だが、今夏の降雨不足の状況では難しい。

四川省政府などによると、今回の電力不足は、記録的な猛暑で電力需要が増加したことに加えて、降雨量不足によって発電量が低下したことが要因という。同省がピーク調整に対応し得る代替電源をほとんど持っていなかったことが今回の事態を招いたといえる。

同省政府は今回の事態を受け、電力供給インフラ整備を加速させる措置を相次いで発表。王暁暉・省書記は17日に国家電網四川省電力を視察し、同社に対して、合理的な送電網の整備やピーク調整電源の確保など安定的な電力供給システムを早急に整備、構築すべきと、事実上の政策指導を行った。また同日、省政府と重慶市政府が共同で「四川・重慶エネルギーのグリーン・低炭素・高品質発展促進共同行動方案」を発表、両地区が共同で新エネルギー開発拠点を整備し、蓄電設備の設置や風力や太陽光といった再生可能エネルギーの開発を加速させるとした。

(森永正裕)

(中国)

ビジネス短信 be43b9866e1b25b2