スタートアップ企業が本わさび生産拡大へ、粉わさび主流の現地日本食市場に注目

(ブラジル)

サンパウロ発

2022年08月18日

米国の経済誌「フォーブス(Forbes)」は88日、ブラジル国内で唯一、本わさびを栽培しているミナト・ワサビがアグリテック企業に投資やビジネス上の支援を行うWBGI(注)から、65万レアル(約1,690万円、1レアル=約26円)の投資を受けたと報じた。これにより同社は、2023年末までに現在の生産ペースを1カ月7キロから同60キロに拡大することを目指す。また、新たに生産の管理プロセスを一部自動化した温室設備を導入することで栽培規模を拡大する。

ミナト・ワサビは、農業分野の研究などで著名なサンパウロ州立大学農学部(Esalq)出身のビニシウス・シンゾウ・アブノ氏が企業したスタートアップ企業。サンパウロ州ピラール・ド・スル市に所在している。ジェトロ・サンパウロ事務所の農林水産・食品コーディネーターであるポンチプロンタの福井真司代表に811日付で、ブラジルでの本わさび生産を拡大する狙いについてヒアリングしたところ、以下の回答を得た。

  • ブラジルで消費されるわさびは、日本や中国、韓国製の粉わさびが大部分を占める。一般消費者向けにチューブ入りの本わさびも販売されているが、ほとんどのレストランでは、粉わさびを使用している。また、ワサビをおろしたものを冷凍した業務用の製品も輸入されているが、一部の高級な日本食料理店で使われているのみである。
  • アブノ氏は、これまでも生産量がわずかながら、商用目的で限られた高級な日本食料理店に本わさびを提供していたが、今回の投資で本わさびの生産量を拡大できる可能性がある。供給量を増すことにより、ブラジルでより本格的な日本食を楽しめる機会が増えることを期待している。

(注)WBGI2019年設立。従業員9人。農作物の栽培業務自動化や害虫対策などのソリューションを持つアグリテック企業など11社を支援している。アグリテック向けのファイナンスのみならず、マーケティングや管理業務のアドバイスなどコンサルティングも行う。

(古木勇生)

(ブラジル)

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