EV購入理由の主因にガソリン代高騰、ガソリン車以上の追加支出には否定的、米民間調査

(米国)

米州課

2022年08月09日

米国のジョー・バイデン大統領は就任以来、温室効果ガス(GHG)の削減に向けた取り組みを重視してきた。中でも、輸送部門でのGHG削減は喫緊の課題と認識されており、727日に上院民主党内で合意された「インフラ削減法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」は、電気自動車(EV)購入の際の税額控除に関する提案を盛り込んでいる(2022年8月4日記事参照)。EVの普及促進は、バイデン政権にとって政策実現に向けた重要な一手段といえる。

このような状況において、米国シンクタンクのピュー・リサーチ・センターが81日に発表したハイブリッド(HEVおよびEVの購入に関する調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると(注1)、7割弱(67%)がHEVおよびEVの購入に対するインセンティブを評価している。一方、「次に自動車を購入する際にEVの購入をどれほど真剣に検討するか」との問いでは、前向きに検討すると回答した割合は42%(「とても」:16%、「ある程度」:25%)にとどまり、検討に否定的な割合は45%(「あまり」:21%、「全く」:24%)と、購入に対する意思は分かれている。

回答者を年齢別に分けると、若年層ほどEV購入を前向きに検討しており、1829歳の55%に対し、65歳以上では31%にとどまった(注2)。また支持政党では、民主党支持層の58%に対し、共和党支持層では23%と、大きな差異がみられた。

EV購入を前向きに検討すると回答した人のうち、7割強が「環境保護」(73%)および「ガソリン代の節約」(71%)をその主因と回答したが、「自動車の最新のトレンドに乗ること」を主因と回答した割合は10%にとどまった。

EV価格や性能面に懸念、中古車売買アプリ利用者向け調査

米国で中古車売買アプリを提供するオートリストは720日、自社アプリ利用者を対象実施したアンケート調査結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注3)。EV購入を検討していない理由を尋ねた設問では、5割弱(48%)の回答者がEVは購入やリースをするのに高すぎる点を挙げた。また、1回の充電での連続航続時間(44%)や地域の充電設備の不足(36%)、充電時間の長さ(31%)、バッテリーの寿命(30%)など、その性能を懸念する回答者も多かった。

また、EV購入のために、ガソリン車の購入時と比べていくら上乗せするかという問いに対しては、「全く」上乗せしない(ガソリン車と同価格帯でなければ購入しない)と回答した割合が28%と最も多かった。「分からない」(22%)と「5001,000ドル」(9%)がこれに続いており、EVの購入のために多くの支出をすることに否定的な消費者が多いことが分かる。

また、ボルボ・カーズが共同保有するEVメーカーのポールスター(注4)が726日に発表したアンケート調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、環境面のメリット以外をEV購入の理由として挙げた回答者の割合は55%だった。

(注1)実施時期は2022528日。回答者は全米の成人1282人。

(注21829歳:55%、3049歳:47%、5064歳:34%、65歳以上:31%。

(注3)実施時期は2022411日~630日。回答者は自動車の購入を検討しているオートリストのアプリ利用者1,982人。

(注4)ポールスターは、ボルボ・カーズと、その親会社である中国の浙江吉利控股集団(Zhejiang Geely Holding Group)が共同で保有する独立EVブランドメーカー。

(滝本慎一郎)

(米国)

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