エネルギー相が原油市場の動向に不満を表明

(世界、サウジアラビア、中東、ロシア)

リヤド発

2022年08月26日

サウジアラビアのエネルギー省は822日、アブドゥルアジーズ・エネルギー相の米国ブルームバーグとのインタビュー内容を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同氏は原油市場が現実の需給関係を十分に反映していないと不満を示し、今後OPECプラス(注1)は減産を含む妥協しない対応をとる用意があることを強調した。インタビュー内容は以下のとおり。

(問)現在の市場状況をどう説明するか。

(答)「The paper oil market(原油先物市場、帳面上の市場)」は、非常にわずかな流動性と著しい不安定さという尽きることのない悪循環に陥り、効率的な値決めに不可欠な市場の機能を損なうとともに、市場参加者のヘッジ費用とリスク管理費用を法外なものにした。これは、原油市場のスムーズで効率的な運営、エネルギー商品、新種のリスクと不確実性を生み出すその他の商品へ負の影響をもたらす。この悪循環は、需要崩壊に関する根拠のない話題、供給量の大幅回復に関する度重なるニュース、(ロシア産原油の)価格上限設定や禁輸・制裁措置の潜在的な影響に関する曖昧さと不確実性によって増幅される。

(問)現在の不安定さが市場機能にいかに影響を与えているのか。

(答)影響は有害である。なぜなら、十分な流動性なしに市場は有効な方法で実際のファンダメンタルズの現実を(価格に)反映させることはできない。加えて、余剰生産能力が厳しく制限され、激しい崩壊のリスクが高い水準にとどまっている場合、市場は誤った安心感を与えうるからである。ここ最近、その証拠を遠くに探す必要はなくなった。「The paper market(原油先物市場、帳面上の市場)」と「The physical markets(現物市場)」の価格はますます分断が進んできた。市場参加者が直面する巨大なリスクと不確実性を効率的にヘッジし、管理できるように、さらなる可視性と明瞭さ、および十分に機能する市場が以前にも増して必要な場面において、市場はある意味で「統合失調症(Schizophrenia)」(注2)状態にあり、それが不安定な市場を作り出し、誤ったシグナルを送っている。

(問)OPECプラスはこれらの問題に対してどのように対処することができるか。

(答)OPECプラスで、われわれは過去に相当挑戦的な環境を経験し、これまで以上に強力で団結した姿を示してきた。OPECプラスは、2020年と2021年に明瞭にそして繰り返し示してきたように、既存の協力宣言メカニズムの中でこのような挑戦に対処するためのコミットメント、柔軟性、方法を有している。そしていつでも、また異なるかたちでの減産を含むガイダンスを提供する。近々われわれは、これまでの経験、成果、成功に基づく2022年以降の新たな合意に向けた取り組みを開始する予定だ。われわれは、この新たな合意をこれまで以上に効果的なものにすることを決意している。現状の有害な不安定さが市場の基本機能を阻害し、原油市場の安定を損なう姿を目の当たりにすることは、われわれの決意を強めるだけだ。

(注1)サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)などOPEC加盟国と、ロシア、メキシコなど非加盟の産油国で構成される。

(注2)本表現は市場価格間の乖離を示していると考えられる。

(秋山士郎)

(世界、サウジアラビア、中東、ロシア)

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