東京都、さいたま市、クアラルンプール市が脱炭素に向け連携加速

(マレーシア、東京、埼玉)

クアラルンプール発

2022年08月22日

マレーシアのクアラルンプール市およびマレーシア工科大学(UTM)、日本の地球環境戦略研究機関(IGES)は8月8日、同市内で「ハイレベル・トーク・セミナー:ゼロカーボン・クアラルンプール市に向けて」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを開催した。

クアラルンプール市と東京都などが進める脱炭素プロジェクトは、環境省が推進する脱炭素社会実現のための都市間連携事業の一環で行われている。クアラルンプー市における低炭素社会実現(注1)を目指して、2019年から東京都と同市が都市間連携を開始し、東京都のノウハウを移転しながら市内の建築物の省エネに取り組んでいるが(2019年9月13日記事参照)、2022年度から新たに、さいたま市が本連携に参加し、脱炭素都市・街 区実現にむけた制度構築を支援する。今回のセミナーでは、東京都、さいたま市、クアラルンプール市の関係者が一堂に会し、2019年からの実績報告に加え、東京都とさいたま市の先進的な取り組み事例が共有された。

クアラルンプール市長のマハディ・ビン・チェ・ンガ氏は冒頭のあいさつで、2019年から東京都と取り組んできた、市庁舎での太陽光発電の導入を始めとする公共施設の省エネ事業の実績を報告。さらに、クアラルンプール市北東部のワンサ・マジュ地区をカーボン・ニュートラル実現に向けたパイロットエリアとする計画も紹介した。

また、さいたま市都市戦略本部未来都市推進部環境未来都市推進担当主査の神田修氏は、さいたま市美園区での、マイクログリッドを用いた「スマートホーム・コミュニティ」の取り組みについて紹介した。区画整理によって発生した土地を、脱炭素政策の実践地として生まれ変わらせるべく、単なる競売ではなく企画提案型の入札を実施し、高気密住宅やPPA(Power Purchase Agreement)モデル(注2)を導入して、エネルギーセキュリティーの高い住宅地区を開発することに成功した、と説明した。

UTMのホー・チン・シオン教授は閉会あいさつで、クアラルンプール市のカーボン・ニュートラル達成には、政府、自治体に加え、在マレーシア日系企業を含む民間企業を巻き込むことが重要で、コベネフィット(相乗便益)の提供が不可欠だと指摘した。

セミナー後、IGESの藤野純一プログラムディレクターはジェトロのインタビューに対し、「本プロジェクトは当初、省エネ中心で進める計画だったが、クアラルンプール市からの要望により、太陽光発電などによる創エネも含む内容に変わった。また、具体的なプロジェクトが始動する段階に移っているので、技術力のある日系企業の参画を期待したい」と述べた。

写真 セミナーの様子。中央がマハディ・クアラルンプール市長(ジェトロ撮影)

セミナーの様子。中央がマハディ・クアラルンプール市長(ジェトロ撮影)

(注1)クアラルンプール市が2020年に宣言した「2050年までにカーボン・ニュートラル実現」の目標達成に貢献することを目指している。

(注2)企業や自治体が保有する施設の屋根や遊休地を事業者が借り、発電した電気を企業・自治体が施設で使うことで、電気料⾦と二酸化炭素(CO2)排出を削減する仕組み。

(芥川晴香)

(マレーシア、東京、埼玉)

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