サル痘感染増でワクチン接種開始、一般の感染拡大の可能性は低いとの見方

(スペイン)

マドリード発

2022年08月02日

スペイン保健省の7月30日に発表したサル痘感染状況に関する報告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、スペインでは519日に初の感染例が複数確認されて以来、729日までの累計感染者数は4,298人となっている。うち4割がマドリード州、3割がカタルーニャ州に集中し、他国と同様、男性間性交渉者(MSM)によるクラスター感染が大多数となっている。また、保健省は30日、サル痘感染による国内で2人の死者が出たことを発表した。女性や乳児の感染も報告されているが、保健省のリスク報告書では、全般的な感染拡大の可能性は低いとしている。

保健省は、医療従事者向けの予防ガイドラインや一般向けのQA集を公表し、感染が確認された場合には自主隔離を行い(発疹などがない場合は5日間で終了し、経過観察へと移行)、濃厚接触者は医療機関には赴かず、地域保健当局にいったん相談するように指導している。

スペインでは、デンマークのバイオ医薬品会社ババリアン・ノルディック製の天然痘ワクチン「インバネックス」によるサル痘の予防接種が実施されている。十分な数量が確保されていないことから、濃厚接触者のうち免疫不全者などや、治療・検査に当たる医療従事者に優先接種した後、7月下旬からマドリードとカタルーニャの2州で濃厚接触者への接種が開始された。対象は今のところ、濃厚接触者および1845歳で感染リスクを伴う性行為を行う未罹患(りかん)者に限定され、マドリードでは150人まで、カタルーニャではバルセロナ市内3カ所で接種予約受け付けが行われている。今後の感染状況に応じて順次、拡大される予定。

スペインはEUの共同購入を通じて、短期的に約11,000回分のワクチンの供給を受ける予定だが、潜在的な濃厚接触者の数に対して数量が少なく、供給体制の拡大が待たれている。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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