長江中下流域の干ばつ、9月まで続く見通し
(中国)
武漢発
2022年08月25日
中国水利部は8月17日、長江沿岸部で発生している干ばつの対策、水資源の供給確保、秋季の穀物確保に関する記者会見を開催した。水利部の劉偉平副部長から、長江の沿岸地域の住民や農作物、家畜が干ばつによる影響を受けている(注1)との説明があったほか、水利部情報センターの劉志雨副主任から、9月まで長江中流、下流地域の大部分で水不足が発生し、安徽省、湖北省、湖南省、江西省などで干ばつがさらに進むという見通しが示された。
中国気象局によると、中国は7月以降、1961年の観測開始以来最も強い熱波に襲われている。主に中国南部で連日、高温が続いているうえ、降雨量も少ない日が続いている。中国気象局は8月18日に、長江流域に中度以上の干ばつ警報を発令した。
水利部長江水利委員会は8月16日正午から、三峡ダムからの放水量を増やし、5日間で長江の中流、下流地域に約5億立方メートルの水を供給するとした(「湖北日報」8月18日)。
また、湖北省財政庁は干ばつ対策として5,000万元(約10億円、1元=約20円)を予算として計上したほか(「湖北新聞」8月19日)、8月中旬以降、湖北省各地でヨウ化銀を搭載したロケットを用いた人工雨を降らせる取り組みが行われており、この取り組みには500万元の予算が計上された(「湖北日報」8月17日)。
湖北省の企業活動などに影響
湖北省の状況を具体的にみると、湖北新聞の8月19日付報道は、7月上旬以降の降水量は例年の約半分程度で、湖北省内の9割の都市で37度以上の猛暑日を記録した、と報じている。そして、長江やその支流の漢江の水位は同時期の過去最低を記録し、8月17日までに707万4,000ムー(注2)の農地、17市州79都市の477万7,800万人の農作物が被害を受け、16万3,000人の飲料水が不足し、直接的な経済損失は34億2,400万元に上るとした。湖北省は、省内の電源構成を水力発電に大きく頼っていることから、長江の歴史的な水位低下で水力発電量が減少、電力不足が発生している。
湖北省に所在する日系企業も、電力不足の影響を受けている。ジェトロのヒアリングでは、現地政府から電力の使用制限による営業時間の短縮を求められる、減電により工場の稼働率を低下せざるを得なくなるなど、熱波およびそれに付随する電力不足の影響を受けているという。
(注1)具体的には、四川省、重慶市、湖北省、湖南省、江西省、安徽省の6省市で1,232ムーの農地、83万人、16万頭の家畜が干ばつの影響を受けたという。
(注2)1ムー=666.7平方メートル。
(楢橋広基)
(中国)
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