モスクワ取引所、円取引を8月8日から一時停止へ

(ロシア、日本)

欧州ロシアCIS課

2022年08月04日

モスクワ取引所(MOEX)は725日、外国為替市場での日本円の取引を88日から一時停止すると発表した。対象は円・ルーブルやドル・円のスポット取引とスワップ商品に適用される。西側諸国の制裁による潜在的なリスクと決済の難しさが理由だとしている。専門家によると、MOEXでの円取引額規模は小さいため、MOEXでの外為取引や円相場に対する大きな影響はないという。

MOEXにおける外国為替市場の6月のスポット取引高は178,000億ルーブル(約391,600億円、1ルーブル=約2.2円)だった(MOEX74日)。そのうち円・ルーブルのスポット取引高は29億ルーブルで、全体の0.02%に満たない。

ロシア大手損保系投資顧問会社インゴスストラフ・インベスチツィイのチーフアナリストによると、最近は円の取引需要が増加し、7月には11億ルーブルを超えていたという。背景について「ロシアの金融機関が日本円以外の口座残高に手数料を課し始めているからだ」と説明した。しかし、フリーダム・ファイナンスのアナリストによると、MOEXの主な取引通貨はドル、ユーロ、人民元のため、円の取扱停止の発表後もMOEXで混乱は生じていない(「フランク・アールジー」725日)。

ロシア戦略研究所のアナリストはMOEXが円取引停止を決めた背景について、円取引を禁止する制裁が導入されて市場参加者に損失が生じるのを避ける意図があると説明した。円相場については、日本の経済と対外貿易に依拠しているため、MOEXで円取引が停止されても、世界の外国為替市場で円相場に大きな影響はないと指摘している(「レンタ・ルー」725日)。国際決済銀行(BIS)が3年ごとにまとめる為替取引高に関する調査結果によると、世界での円取引額は11,000億ドル、うちスポット取引額3,600億ドル(いずれも20194月の1日平均)に上り、MOEXでの円取引額は極めて小さい規模にとどまる。

MOEX85日までに締結される取引に係る債務の履行を通常どおり行い、日本円の取引再開に必要なあらゆる措置を講じる予定だと発表している。

(小野塚信)

(ロシア、日本)

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