米スペースX、Tモバイルと連携し米国の遠隔地に無線通信サービスを開始予定

(米国)

ニューヨーク発

2022年08月30日

イーロン・マスク氏が率いる米国航空宇宙企業スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX、本社:カリフォルニア州ホーソン)は825日、米通信大手Tモバイル(本社:ワシントン州ベルビュー)と連携し、同社の衛星通信サービス「スターリンク」を駆使して、これまでTモバイルの電波圏外だった米国の遠隔地に無線通信サービスを提供する共同計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

発表によると、国立公園などでの土地利用制限や山間部や砂漠といった地形上の制約から、従来の技術ではこれらの地域をカバーすることは難しく、現在のLTE5G(第5世代移動通信システム)ネットワークでは、米国国土の20%以上がスマートフォンから無線通信に接続できない状況にあるという。これらの地域では、人々は通話ができないまま取り残されているか、あるいは、通信料の高額な衛星電話の携行を余儀なくされていることから、両社は、こうした通信環境を改善し、国立公園のハイカー、消防士などの緊急事態対応要員、遠隔地のリモートセンサー装置を含め、より多くの人々や設備を対象とした良好な通信サービスを提供する、としている。また、当該サービスを実現することで、個人や企業に多大なビジネスチャンスの影響をもたらすと述べている。さらに、両社は、米国にとどまらず、「真のグローバルコネクティビティ」を実現するために、幅広い世界の通信事業者にも協力を呼びかけている。

今回の計画は、スペースXが予定している衛星打ち上げ後、2023年末までに一部の地域でベータ版からサービス提供の開始を予定している。ハワイやアラスカを含む米国本土の大半の地域で、Tモバイルの利用者が、ネットワークの電波が届かない遠隔地でも携帯電話のテキスト・メッセージの送受信が可能になるとし、今後は音声通話やデータ通信のサービスへの拡大も視野に入れている。

スターリンクは、スペースXが地球の低軌道上に打ち上げた人工衛星のネットワークで構成されており、世界中の遠隔地に高速インターネットを提供するために設計されている。CNBCによると、同ネットワークを支えるためにこれまでに2,700基以上の衛星を打ち上げている(CNBC825日)。

近年、大手通信業者と衛星プロバイダーが、衛星通信サービスを導入するために提携するケースが増えている。20219月、ATT(本社:テキサス州ダラス)は衛星通信会社のワンウェブ(本社:英国ロンドン、米国拠点:バージニア州マクレーン)との提携を通じて、人工衛星による企業向けインターネット接続サービスを提供すると発表している。同年10月には、ベライゾン(本社:ニューヨーク州)が自社の無線ネットワークを強化するために、アマゾン(本社:ワシントン州シアトル)の衛星ブロードバンド計画「プロジェクト・カイパー」との提携を発表し、4G LTE5Gのカバレッジを増強する計画を明らかにしている。

(樫葉さくら)

(米国)

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