新大統領選出に金融市場は反応薄、経済危機後はトリプル安

(スリランカ)

アジア大洋州課

2022年07月26日

スリランカ議会は720日、新大統領にラニル・ウィクラマシンハ前首相を選出した。週明け25日時点の為替レートは1ドル360スリランカ・ルピーで、選出前と大きな変化はない。同国の経済危機の原因の1つに通貨の大幅安がある。現在、投資家が新大統領を好感してスリランカ・ルピー買いに転じたという動きはみられない。2022年初からの通貨の下落率は43.6%と4割を超えている。通貨安は輸入品の自国通貨建て価格を上げるだけに、食料やエネルギーなどを外国に依存するスリランカには厳しい局面が続くことになる。

株式市場への資金流入も限定的だ。77日以降、主要株価指数のコロンボ全株指数は、地元紙によると、新大統領選出が順調に進行するとの見通しなどから、底打ち感がみられていた。しかし、選出後も政府へのデモが続くとの見通しから、政治・経済の先行きに悲観的な見方が広がり、25日の終値は7,639.4と前週末の7,721.8から弱含みとなった。21日から下落に転じて早くも息切れ感が出ている。株式市場の年初からの下落率は39.5%と4割近く下落している。

政府の10年債の金利は財政状況の不安を映して、25日に27.6%まで上昇した。金利上昇は債券安の裏返しだ。新大統領選出前の19日は28.1%だったが、選出後に金利低下は見られたものの、歴史的に高い金利水準となっている。年初からは15.7%金利が上昇している。外貨準備高も大きく減少し、政府自身がスリランカを破産国家と認めるほど、債務履行の状態にはほど遠いことから、外国人投資家は政府の支払い能力に疑念を抱き、それが金利高となって表れている。

経済危機が表面化した2022年以降、スリランカの金融市場はトリプル安が続き、新大統領就任後も好転する兆しがみられない。IMFとの交渉など国際機関や各国からの金融支援の行方も現時点では明確でなく、市場は経済の先行き不安感を反映しているといえそうだ。

(新田浩之)

(スリランカ)

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